融合領域研究所特別研究員紹介

生体・エネルギー・物質材料領域基盤
竹野 貴法

生体・エネルギー・物質材料領域基盤 竹野 貴法

研究者間の知識の融合

私は、『流動ダイナミクスにおけるグランドエフェクトの学理構築』というテーマの下、融合領域研究所で研究を進めています。流体科学研究所において遂行された21COEプログラムの研究グループの内、研究テーマは強干渉流動システムグループのテーマの一端を担っており、私は炭素系薄膜材料における低摩擦発現メカニズムの解明を進めています。

本研究では、強干渉流動の代表である地面効果をトライボロジー分野に拡張し、『2つの物体が、原子・分子の単独或いは集団を介して相互作用することで生まれる強干渉効果』と定義し、分子の流れ、表面への吸着、圧縮・せん断、表面化学反応による化合物の生成、生成物と分子との反応など、摩擦における一連のダイナミックな挙動を、流体力学・材料科学・トライボロジーの3学問の融合的視点から解明することを大きな目的にしています。そして、融合による成果として、『設計手法の融合による新規インテリジェント表面の作製』と『摩擦に関する融合的概念の構築』が期待できます。

本研究は、融合領域研究所と流体科学研究所、工学研究科、宇宙航空研究開発機構、フランスエコールセントラルリヨンとの共同研究の下に遂行されており、融合研究はこの様な研究者間の知識の融合によって、初めて達成できるものと考えています。

先端基礎科学領域基盤
湊 丈俊

先端基礎科学領域基盤 湊 丈俊

表面科学と固液界面化学の融合による
新規な化学反応の解明と応用

2007年10月より国際高等融合領域研究所に着任し、「表面科学と固液界面化学の融合による新規な化学反応の解明と応用」を目指し、研究活動を進めています。固液界面は、電気化学、有機・無機化学、生化学などで固気界面などでは起きえない特有の反応が進行しますが、その複雑さから反応機構は不明な場合が多くみられます。本研究ではこの固液界面に対して、表面科学の概念と技術を融合し、原子・分子レベルで反応機構を解明し、応用することを目的としています。独創的な点としては、「表面科学者による固液界面反応の解明と応用」という点が挙げられます。固液界面反応に表面科学を融合しようとした取り組みは、数少ないながらもこれまでに行われてきましたが、これまでは、固液界面化学を専攻してきた研究者が、表面科学の概念や手法を取り入れようとしてきました。しかし、表面科学は理論的に体系化された分野であるため、固液界面化学者が取り組もうとしても部分的にしか達成することは出来ませんでした。

一方、表面科学者は理想的な議論を展開できる真空や低温などの環境で研究を進めてきたため、固液界面のような複雑な系は研究対象として避けてきた経緯があります。ところが近年、表面科学における実験技術や理論的解明が進み、固液界面のような複雑な系にも適用可能な研究手法が現われています。そこで本研究では、これまで表面科学で研究活動を進めてきた私が、先端の理論や技術を固液界面に融合することによって、固液界面を原子・分子レベルで真に解明しようと取り組んでいます。

国際高等融合領域研究所は、異分野融合による新しい学術分野の創出を前面に打ち出した、これまでにない研究所ですが、その中で理・工・医・薬・法・文などで各分野を代表する実力を兼ね備えた研究者と議論を重ねることで異分野融合の意義を問い詰め、固液界面の解明と応用を開拓したいと思います。

ライフ・バイオ・メディカル領域基盤
斎藤 将樹

ライフ・バイオ・メディカル領域基盤 斎藤 将樹

今年度は米コーネル大学医学部で研究

昨今の高齢者人口の増加により骨粗鬆症、癌、脳卒中や心筋梗塞などの血液循環障害や、高血圧症などの疾患が増加していますが、私はこれらの疾病を「高齢社会病」と定義しています。現在、高齢社会病に対する薬物治療は満足であるとは言えず、より有効な予防薬や治療薬の開発研究に対するニーズが社会的にも非常に高くなっています。

私はこれまで、骨粗鬆症に関与する副甲状腺ホルモンの機能発現を、細胞膜裏打ちタンパク質4.1Gや輸送タンパク質Tctex-1が制御することを示しました。また、高血圧症に関与するアンジオテンシンII受容体の発現制御機構についても明らかにしました。これらの研究は、予防・治療薬開発のための新規標的タンパク質の発見に繋がります。一方で私は、抗がん作用や抗血液循環障害作用を有する新規化合物をそれぞれ探索し、その作用機序の解析を行ってきました。

今後、高齢社会病の予防・治療における薬物の作用点および薬物シーズの探索という二方向からのアプローチを行うことを通して、高齢社会病に対して従来存在しなかった新たな予防・治療戦略の確立を目指したいと思います。

私は平成21年度、Tctex-1に関する研究を米コーネル大学医学部にて行います。ここで得られる研究成果や考え方などを今後の研究に生かし、高齢社会病に対する創薬研究を発展させたいと思います。

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