博士課程後期課程の学生アンケートに見る大学院の教育

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先頃、「将来の産業社会の基盤を支える科学技術系大学院生のための教育改革-大学院教育の‘見える化’による改革の推進―」という報告書が総合科学技術会議基本政策専門調査会から出されました。その報告書が取り上げた「博士課程(後期)学生からみた大学院の教育プロセス」を紹介しておきます。本学でも高等教育開発センターが本学の全大学院生を対象にアンケート調査を実施し報告書が出たところですので比較もよいかもしれませんが紙数の制限もあり紹介にとどめておきます。

コースワークが優勢

「報告書」は、全国の大学院博士課程(後期)学生4384人(人文、社会、理学、工学、農学、保健、その他)を対象に、文部科学省(委託先:財団法人未来工学研究所)が行った、平成20年度先導的大学改革推進委託事業「博士課程(後期)の学生、修了者等の進路に関する意識等についての実態調査」を引用して論じています。それによると、博士課程(後期)の学生が教育研究上の取組として経験があるものの第一に講義、演習といったコースワークを挙げ、第二に国際学会等への参加支援、第三には複数の専門分野に係る教育研究等を挙げています。一方で、企業のニーズを踏まえた科目の履修や、企業へのインターンシップ、キャリア・アドバイザーによる就職支援等のキャリア教育を挙げた者は、きわめて少ない数となっていました(図1)。

図1


自らの専門分野に自信

次に、博士課程(後期)修了時に「身についていると見込まれる知識・技能・態度について」問うています。ここでは身についていると見込まれるとして「専門分野の理論的知識」、「専門分野の方法論や分析方法」、「専門分野の研究能力」、「専門分野の先端的知識」、「プレゼンテーション能力」等が高い割合で選択されており、専門分野への自信のほどが示された形になっています(図2)。

図2


身につけたい能力が身につかない

ところで、修了時に「身についていると見込まれる能力」と「身につけたい能力」(図3)とを比較してみると、「専門知識を応用する能力」、「複数の専門分野を融合できる知識や方法論」、「研究プロジェクトのマネジメント能力」「学際的な知識や方法論」「幅広い教養的知識」などの項目に大きな開きがあることがわかります。つまり、身につけたいと感じていながら、現実の教育研究活動では身についていないという現実が浮かび上がってきています。

図4


産業界が期待する能力

この現実には身についていない能力こそが産業界が期待する能力でもあり、この差を埋める教育が博士号取得者の企業就職、その後の幅広い分野での活躍を促すものと「報告書」は指摘しています。

大学院博士課程修了後の希望職種では、研究開発職が圧倒的に多く、民間企業等に就職したいという希望は研究開発職の3分の1にも満たないものでした(図4)。

院生達が進路の検討に当って大学に望むこととして、大学教員ポストの拡充、求人情報の提示、企業等に対する大学・教授推薦枠の拡充等が挙げられています(図5)。

そこで「報告書」は、学生向けの民間企業等の説明会、進路ガイダンスの実施、インターンシップの実施や民間企業に関する適切な情報が提供されれば、今後、企業への就職希望者が増えることが期待されるとしています。本機構はこれまで通り数%の優秀な院生への支援と共に、今後は圧倒的に多くの院生へも豊かな教育プログラム、例えば統合的科学技術コース(仮称)などを提供していくための工夫をする予定になっています。

(デンベレル・ドナイ記)

図4


図5


第1回PEM資格認定証書授与式行われた

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3月25日(木)学位記授与式終了後に行われた生命科学研究科長賞授与式に引き続き、第1回PEM(プロフェショナル・エコシステム・マネージャー)資格認定証書授与式が生命科学研究科で行われました。晴れて資格を認定されたのは生命科学研究科を修了し科目等履修生として資格をとった鈴木雅絵さん、中井静子さん、生命科学研究科博士課程修了者の吉野元さんの3人でした。

PEM資格認定証書授与者

PEM資格認定証書授与された(前列左から) 吉野元さん、中井静子さん、鈴木雅絵さん。 (後列左から)水野健作生命科学研究科長、 井小萩利明国際高等研究教育機構長と 中静透GCOE「環境激変への生態系適応に 向けた教育研究」拠点リーダー。

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