研究教育院生の選抜について

6月4日開催の国際高等研究教育機構運営専門委員会、6月15日開催の同運営審議会の議を得て4~5頁に掲載した研究教育院生が誕生しました。選抜にあたりましては各研究科等ならびに5領域基盤の計21人の審査委員の先生方に多大なご協力を得て選抜を無事終了することができました。全研究科等および推薦等に関わっていただいた多くの先生方に御礼申し上げると共に、必ずしも推薦の意に添えなかった結果もありご容赦いただきたいと思います。

これまで、選抜の経緯は公開してきておりませんでしたが、透明性を確保するために選抜の概略をお知らせいたします。

推薦、審査等に関する申し合わせ事項について

研究教育院生に応募しようとする学生に対して修士研究教育院生は2月に、博士研究教育院生は4月に説明会を開催し、本事業の意義にはじまり申請書の書き方、融合研究の意義、計画書の作成の仕方とポイント、指導教員に推薦書をもらうために、などを説明するとともに、審査の流れやヒアリングの受け方、これまでの審査の特徴点などについてもある程度の解説をしてきました。

選抜には本機構の運営専門委員会が定めた「7)申し合わせ」(平成20年3月14日、本機構の「年報」に毎号掲載以下同様)の①国際高等研究教育院の支援を受けて融合領域の新分野で学習及び研究活動を行おうとする大学院生に関する申し合わせ事項、②「修士研究教育院生」に関する申請及び推薦・選抜に関する申し合わせ事項、③「博士研究教育院生」に関する申請及び推薦・選抜に関する申し合わせ事項、「8)修士研究教育院生の推薦について」、「9)博士研究教育院生の推薦について」、「10)各研究科からの推薦に基づく修士研究教育院生の本院における選抜審査について」、「11)各研究科からの推薦に基づく博士研究教育院生の本院における選抜審査について」にもとづき実施してきております。なお、総長からの時折の指示等がある場合には説明会や運営専門委員会等でお知らせしてきました。この申し合わせ等は審査の客観性を可能な限り担保し、点数化出来るものは点数化するというようなことで整理をし、その後、運営専門委員会内にワーキンググループを設置し、申請書に融合研究に関するエッセイなども書いてもらい、学業成績だけでなく、総合的な判断を加えることとしました。したがって、必ずしも「出来る学生」が自動的に合格するということにはなっていません。

研究教育院生の応募及び審査状況

表に各研究科ごとの研究教育院生の応募及び審査状況を掲げました。応募者数、推薦数等は各研究科からの報告に基づいた数字になっています。また、博士研究教育院生の欄の「修」は修士研究教育院生であった学生の数、「DC1」は学術振興会の特別研究員DC1の略、「修DC1」は修士研究教育院生であった学生でかつDC1採用者をあらわしています。

修士研究教育院生に応募した学生の内、研究科の推薦に漏れた学生は8人、博士研究教育院生は2人、不合格になった博士研究教育院生の中には、修士研究教育院生であった学生が4人、DC1に採用された学生の2人が含まれています。修士研究教育院生4人が選に漏れた問題は今後議論が必要かと考えられます。

「融合研究」になっているのか、否か

「融合研究とは何か」を明示していないにもかかわらず、「融合研究になっているか否か」を問うのはおかしいと考える人もいるかもしれません。しかし、これは毎回の説明会でも指摘していることですが「多様な見方や考え方を保証するために、機構があらかじめ規制や制限を加えないようにする」という立場からこのようにしてきています。申請者に自由に発想してもらうことこそ、研究の多様性、独創性を担保することになり、思いもよらない研究をピックアップ出来る可能性が高まると考えているからです。

ところで、申請者が一生懸命書いた融合研究に関するエッセイはなかなかの見識を示した力作も多いのですが、申請者の研究計画書の個別研究テーマとなると異分野の融合とは言い難い内容も少なくありませんでした。これは毎年度に共通する特徴です。なぜそのような現象が起きてしまうのかですが、次のようなことが考えられます。

それは、自分の専門分野をどう捉えているかに関わっており、細分化、先鋭化した専門分野ではごく狭い領域を自分の守備範囲とするため、ほんのちょっと離れた隣接分野の壁も高く、異分野に見えてしまうことに起因し、はためには、ちょっとしか離れていないようにしか見えない分野でも、自分では異分野と認識しているからだと考えられます。これこそ、現在の学問状況を映し出しているのだといえます。したがって、総論は立派なのですが、各論となると貧弱な説明が多いのが実状、と言うことにならざるを得ません。

情熱をもって取り組む意欲があるのか、否か

学問探求のモーティブフォースはなんと言っても、興味深く、おもしろくてしょうがないという探求心です。これが伝わってこないものが少なくありませんでした。これがないと、人の胸を打つような説得ある内容になかなかなりませんし、将来、困難に打ち勝って前進する力が湧いてきません。また、自分のことばで、こんなにおもしろい研究なんだと主張して欲しいと思いますが、なかには、所属する研究室やGCOEプログラムやはたまた指導教員の研究なのか、自分の研究なのか区別がつかないような内容も少なくなく、自立性や探求心が感じられないものも多くありました。ヒアリングの評価ではこの点がポイントの一つにもなっているように思われます。

ヒアリング日時の調整について

多忙な審査委員の日程と申請者の日程との調整は毎年困難を極めます。授業に出席するためにはじまり、やれ何々があるからヒアリングの日程を変えて欲しいという微調整が山のように少ない事務職員に襲いかかります。なかには外国にいるというのでスカイプを使ったヒアリングもやりました。甘やかせすぎともとれますが、アクティヴィティの高い若手は、忙しく活動していて当たり前ですから、なんとか審査委員も時間をやりくりして、良い学生を選抜しようとしてきたわけです。

今後の課題

豊富な財源の中での事業ではなく、ギリギリの予算の中で実施しているので、苦渋の選択も少なくなく、推薦者の先生方から時折おしかりを受けることもあります。書類審査はともかくも、15~20分程度のヒアリングによって選抜することの難しさもあります。中には数点の違いで結果的に不合格になっている場合もあります。今年度はこれまでの経験から問題点や今後の課題を明らかにする予定です。

(研究教育院長 井原 聰)

平成22年度修士・博士研究教育院生応募及び審査状況

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