PEM(プロフェッショナル・エコシステム・マネージャー)資格への挑戦

社会が求めている生態環境人材

 PEM(Professional Ecosystem Manager)とは、生物・生態系に関わる高度な専門性と同時に、環境保全問題の解決に必要な実践力やコミュニケーション能力をあわせもつ人材に付与される資格です。文部科学省のグローバルCOE(学際・複合・新領域)で2008年度に採択された「生態適応GCOE」(拠点リーダー:生命科学研究科・中静透教授)の3つの教育プログラムの全課程を修了し、博士号を取得したものに、国際高等研究教育機構長により、PEM資格が授与されます。

「基盤教育プログラム」と「先端研究者育成プログラム」

 激変する生態系や生態系サービスの維持には、これまでの自然克服型対応では不十分で、生態系が本来もつ頑健性や適応力を利用した生態系保全の対策が求められています。このような社会的ニーズに応えるために、「生態適応GCOE」では生態適応科学の集大成を目指しています。
 「基盤教育プログラム」では、その基礎的な分野の知識の習得ならびに分野間の融合の必要性を学びます。また「先端研究者育成プログラム」では、それに加え、生態系に関する環境分野で国際的に研究をリードする先端研究者の育成を目指し、海外への短期留学、国際学会での発表、国際フォーラムへの参加など、国際的な学術研究を奨励する特別研修を実施し、支援しています。

「PEMプログラム」

 さらに、高度な専門知識を企業や国際環境機関、自治体・NGOにおいて活かし、環境問題解決に活かすことができる実践力とマネジメント能力をもつ人材育成を目指し、「PEMプログラム」は開発されました。PEMの講義は、主に土日の集中講座で行われる「環境学実践マネジメント講座」のほかに、「国際フィールド実習」「国際インターンシップ」の実践科目があります。

  科目名 内 容
環境学実践マネジメント講座 生態環境
マネジメント科目
サステナビリティ
概論
サステナビリティに向けた動きに関して、主要な地球環境問題が企業・行政運営に与える影響について体系だった理解を得ることを目的とする。
環境
マネジメント概論
資源・環境制約に人間社会がどう向き合ってきたかを歴史的に振り返ると共に、環境マネジメントシステムの実態と将来に向けた課題について理解する。
ソーシャル・
レスポンシビリティ学Ⅰ
持続可能な社会を構築するために先進国だけでなく、途上国の環境に与える影響も含め、各主体が果たすべき責任を、企業や行政を中心に考える。
生態環境
ソリューション科目
ソーシャル・
レスポンシビリティ学Ⅱ
実際に活動に携わってる企業・官庁・NGOなどの担当者を講師に招いて各主体の社会的責任について、実例を紹介する。
環境
マネジメント手法
生態系や生物多様性の管理やその問題解決に必要な、順応的管理の考え方、シナリオ作成とオプション選択、および、合意形成などの手法を具体的に学ぶ。
実践科目 国際フィールド実習 環境問題を抱える海外現地で集中的な講義とともに、学生グループにテーマを与えてその解決を探る実践的実習を行う。
国際
インターンシップ
海外の研究機関や企業、国際機関、NGOなどで大学院生のインターンシップを行う。

PEMを支える多彩な講師陣と環境機関コンソーシアム

 PEMの講師陣は、生命科学研究科の中静透教授、河田雅圭教授、占部城太郎教授、環境科学研究科の藤崎成昭教授など「生態適応GCOE」事業担当者をはじめとして、他大学、国際研究機関、企業、NGO、行政など、多彩な分野から第一線で活躍中の講師を招き、社会的、国際的な視点を強く反映させた指導を行います。たとえばソーシャル・レスポンシビリティ学ではリコー、富士ゼロックス、損保ジャパンなどの環境先進企業、JICAやアムネスティ・インターナショナル日本などの国際機関、また国際NGOのナチュラルステップ・ジャパンやバードライフ・アジアなど、講師陣の分野の多彩さに加え、座学のみでなくディスカッション、ワークショップなど参加型の授業形式を取り入れています。
 PEMプログラムはこの他に、海外の研究機関や企業、国際機関などで実践力を身につける「国際インターンシップ」や海外の現地での集中講義「国際フィールド実習」の実践科目で現場を実体験できます。
 初年度の受講生は35名、受講生同士のネットワークも広がり、e-learningの翻訳事業やブランド米の調査事業など、自発的な活動も始まりました。同時に「生態適応GCOE」が新設した「環境機関コンソーシアム」からの講師も多く、その存在はPEM受講生にとって、共同研究や就職活動の支援など、授業を超えた多くのコラボレーションが生まれる可能性を秘めています。

生態適応GCOEと環境機関コンソーシアム

GCOE

東北大学大学院 生命科学研究科 生態適応グローバルCOE支援室

〒980-8578 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
Tel:022-795-3637  Fax:022-795-3638
http://gema.biology.tohoku.ac.jp
e-mail:eco-gcoe@bureau.tohoku.ac.jp

PEMを受講すると

 一研究者というだけではなく、広い視野、行政への監視力、企業の活動への関心など、社会に対する環境についての関心の深さも身につけ、手にするこの資格は、世界に羽ばたき環境関連の仕事に従事するときに、必ず強力な武器となるでしょう。

コラム

■PEM受講希望のみなさまへ

  • 東北大学大学院の8研究科※のいずれかに所属し、生態適応GCOEの事業担当教員のもとで博士課程後期の学生として研究を行う必要があります。
  • 博士課程修了者は、生命科学研究科の科目等履修生として登録することが必要です。
  • 「先端研究者育成プログラム」を受講する博士課程後期の学生に対して、経済的支援を行っています。そのうえで「PEMプログラム」を受講し、資格を希望する学生には、さらに増額した経済的支援が受けられます。
  • コンソーシアムメンバーはPEM授業に参加できます。(資格認定の対象外。参加不可能な授業も一部あります)
  • 詳しくはお問い合わせください。

※PEMを受講できる東北大学大学院の8研究科

  • ■ 生命科学研究科
  • ■ 工学研究科土木工学専攻
  • ■ 農学研究科資源生物科学専攻
  • ■ 農学研究科応用生命科学専攻
  • ■ 薬学研究科生命薬学専攻
  • ■ 経済学研究科経済経営学専攻
  • ■ 情報科学研究科人間社会情報科学専攻
  • ■ 環境科学研究科

熱帯の生物たちとその多様性を満喫した国際フィールド実習熱帯の生物たちとその多様性を満喫した国際フィールド実習 (写真©吉野元 マレーシアサバ州レインフォレスト・ディスカバリーセンターにて)

現地の学生とのディスカッション国際フィールド実習で訪れたマレーシア大学では「持続的な森林管理 について」発表を行い、現地の学生とのディスカッションが行われた

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