【海外研究集会発表支援プログラム報告】森冠太さんが ICM 2024 にてポスター発表をしました。

◇発表者◇
 森 冠太
 デバイス・テクノロジー領域
 博士研究教育院生3年
 工学研究科 電気・エネルギーシステム専攻

◇学会名称◇
 International Conference on Magnetism 2024 (ICM 2024)
◇開催地◇
 ボローニャ、イタリア
◇開催期間◇
 2024年6月30日 ~ 2024年7月5日

◇発表題目◇
Sharp-angled spin-wave waveguide consisting of a two-dimensional magnonic crystal with optimized corner structures

◇発表内容◇
磁性体中を伝搬する磁化の波動であるスピン波は、ジュール熱の発生しない超低発熱の情報キャリアとして注目されている。スピン波を制御するために、導波路上に形成された周期構造であるマグノニック結晶が広く研究されている。本発表では、二次元マグノニック結晶を使用して、スピン波の流れを制御することを目的とした。イットリウム鉄ガーネット導波路上に、周期的に穴の開いた銅膜を配置することで、二次元マグノニック結晶を設計し、このマグノニック結晶中にZ型の線欠陥を導入した。電磁界シミュレーターを使用して、高周波磁界分布を計算したところ、線欠陥中のみを伝搬するスピン波が観測され、二次元マグノニック結晶によるスピン波の流れ制御を実証した。また、曲げ部分の構造を最適化することによって、曲げ損失を72.9 %低減することに成功した。

◇今回の発表によって得られた成果及び問題点◇
二次元マグノニック結晶を使用して、スピン波の流れ制御を実証した報告は本発表が初めてであり、多くの方に興味をもっていただいた。一方で、この二次元マグノニック結晶導波路を実用的に使用するためには、金属によるスピン波の損失が課題である。そこで、これまでの開発の知見を活かして、異なる動作原理や低損失な材料を使用した二次元マグノニック結晶の開発も進めていきたい。

◇今後の研究目標及び課題◇
今回の報告では、二次元マグノニック結晶Z型導波路の曲げ部分の構造を最適化することで、曲げ損失を72.9 %低減することに成功した。しかし、二次元フォトニック結晶を使用したZ型導波路の先行研究では、トポロジー最適化という手法を用いることで、曲げ損失をほとんど0にすることに成功している。二次元マグノニック結晶導波路をデバイス上で使用するためには、曲げ損失を抑えるための最適化計算が必要である。そのため、二次元マグノニック結晶導波路におけるトポロジー最適化を実現したい。