大竹桃さんらの論文がプレスリリースされました。

イネ科植物が太陽紫外線の下で生き抜くために独自に獲得した仕組みを解明

【発表のポイント】

  • 植物にとって、太陽紫外線UV-B(注1)によるDNA損傷(シクロブタン型ピリミジン二量体:CPD)を修復する機能をもつCPD光回復酵素(注2)は必須のタンパク質です。
  • イネは、CPD光回復酵素のN末端領域の7番目のセリンのリン酸化状態を制御することにより、同酵素を葉緑体に輸送していることを発見しました。
  • 維管束植物(注3)のうちイネ科植物のみが、CPD光回復酵素を葉緑体に輸送してDNA修復を行う仕組みを、太陽紫外線の下で生き抜くための適応戦略の一つとして獲得したことを明らかにしました。

【概要】

植物は、太陽光に含まれる紫外線B(UV-B)による障害を、様々な仕組みで修復しながら生きています。CPD光回復酵素は、UV-Bによる障害の中でも、植物の生育に最も悪影響を及ぼすDNA損傷を修復するタンパク質です。

東北大学大学院生命科学研究科の大竹桃大学院生(学際高等研究教育院 博士教育院生)、日出間純准教授らの研究グループは、イネのCPD光回復酵素はN末端領域7番目セリンのリン酸化状態を制御することで、葉緑体への輸送を調節していることを明らかにしました。さらに、維管束植物の中ではイネ科植物のみが、CPD光回復酵素を葉緑体に輸送してDNA修復を行う仕組みを有していました。これらの結果から、進化の過程でイネ科植物が、太陽光の下で生存するために、CPD光回復酵素を葉緑体に輸送する仕組みを適応戦略の一つとして独自に獲得したことが示唆されました。

本研究成果は、各細胞小器官へのタンパク質輸送の新たな仕組みを解明すると同時に、様々な光環境下で生育する植物における、UV-B防御・生存適応戦略の仕組みの新たな理解をもたらすものです。本研究成果は、2024年2月12日に植物生理学の専門誌Plant Physiologyに掲載されました。また、本論文は、Plant PhysiologyのNews and Viewsにも取り上げられ紹介されました。

 

 

 

 

 

 

 

1. CPD光回復酵素の各小器官への輸送の仕組み
赤線:疎水性アミノ酸の多いN末端領域、P:リン酸化

【用語解説】

1. 紫外線Bultraviolet-B: UV-B
太陽光の一部であり、280-315 nm の波長の光。UV-Bの大半はオゾン層に吸収されるが、一部は地上に届く。一般的に短波長の光ほど生体への影響が強く、UV-BによるDNA損傷の蓄積は、ヒトでは皮膚がん、植物では生育障害の主な原因となる。

2. CPD光回復酵素
紫外線によって誘発されるDNA損傷の1つであるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を特異的に修復する酵素である。この酵素は有胎盤哺乳類を除くすべての生物が保有する酵素であり、青色光を利用して修復する。紫外線を含む太陽光の下で生きる植物にとって、重要な酵素である。

3. 維管束植物
通道組織である維管束をもつ植物の総称。種子植物やシダ植物が含まれ、高等植物とも呼ばれる。

詳細(プレスリリース本文)