【海外研究集会発表支援プログラム報告】山谷礼輝さんがThe Organization for Human Brain Mapping (OHBM) 2023にてポスター発表をしました。

◇発表者◇
 山谷 礼輝
 人間・社会領域
 博士研究教育院生4年
 医学系研究科 医科学専攻

◇学会名称◇
 The Organization for Human Brain Mapping (OHBM) 2023
◇開催地◇
 モントリオール、カナダ
◇開催期間◇
 2023年7月21日 ~ 2023年7月26日

◇発表題目◇
The effect of meditation on resting-state functional connectivity and its relationship with fatigue

◇発表内容◇
長時間にわたり注意機能を必要とする課題を行った時に、時間経過に伴い課題パフォーマンスが低下する現象を状態疲労という。我々は、状態疲労に対する瞑想の予防効果とその神経基盤を検証した。
健康な参加者を、瞑想を行う群(瞑想群)と擬似瞑想を行う群(統制群)に分け、各瞑想を10分間行うよう求めた。瞑想の前後で、機能的磁気共鳴画像法を用いて脳活動を撮像し、脳内ネットワークの変化を評価した。次いで、参加者に注意機能を要する疲労誘発課題を60分間連続して行うよう求め、課題の時間経過に伴うパフォーマンスの変化を評価した。
この結果、統制群では課題時間の経過に伴い課題パフォーマンが低下し状態疲労を認めた。一方で、瞑想群では課題パフォーマンスの低下を認めなかった。また、統制群では瞑想の前後で、注意機能の低下と関連のある脳内ネットワークの強化が認められ、このネットワークの強化と課題パフォーマンスの低下と相関関係が認められた。一方、瞑想群では注意機能の向上と関連のある脳内ネットワークの強化が認められた。
以上のことから、1回10分の瞑想によって状態疲労を予防できることと、その神経基盤として、注意機能の低下と関連のある脳内ネットワークの強化の抑制と、注意機能の向上と関連のある脳内ネットワークの強化の促進が示唆された。

◇今回の発表によって得られた成果及び問題点◇
医学臨床分野や健康科学分野などの研究者からポジティブなフィードバックを得た。このことから、本研究テーマが重要なトピックであることを再認識できた。
一方で課題点としては、瞑想群において注意機能の向上と関連のある脳内ネットワークの強化と課題パフォーマンスの維持の間で有意な相関関係を認めなかったことである。この原因として、他の何らかの要因がこの関係性を媒介・調整していると考えられ、さらなる研究が必要と考えている。

◇今後の研究目標及び課題◇
今後の研究目標は、3点ある。1点目は、上述した媒介・調整要因を調べることである。2点目は、疲労症状が生じる疾患を持つ人を対象とした臨床研究を行い、臨床応用の可能性を検証することである。3点目は、勉学や部活動に忙しい中高生や働き盛りの30~40代、高齢者など様々な年齢層を対象に、同様の効果が認められるかを検証することである。