【海外研究集会発表支援プログラム報告】厨川和哉さんが7th World Tribology Congressにて口頭発表しました。
◇発表者◇
厨川 和哉
物質材料・エネルギー領域
博士研究教育院生3年
工学研究科 機械機能創成専攻
◇学会名称◇
7th World Tribology Congress
◇開催地◇
フランス リヨン
◇開催期間◇
2022年7月10日~2022年7月15日
◇発表題目◇
Critical Concentration of Oxygen and Water Molecules for Continuous Low Friction of Hydrogenated Carbon Nitride Coatings
◇発表内容◇
本研究では、コーティング材料である水素含有窒化炭素(CNx:H)の無潤滑低摩擦システムにおいて、摩擦環境中のO2およびH2O分子が低摩擦継続性に及ぼす影響を実験的に明らかにしました。酸素濃度および相対湿度が極めて小さい窒素環境では、Si3N4/CNx:H摩擦対は低摩擦(μ<0.05)を示す一方で、コーティングの摩滅・剥離が生じていないにも関わらず摩擦が増加する、低摩擦自体の寿命が存在します。一方、この低摩擦寿命は酸素濃度と相対湿度が臨界値を超えると劇的に延長され、臨界値以下と比較して約10~50倍以上の期間低摩擦を継続することが明らかとなりました。本研究結果は、摩擦環境中のO2およびH2O分子と摩擦材料の摩擦起因の化学反応(トライボケミカル反応)による低摩擦ナノ炭素界面の継続的形成を示唆するものです。
◇今回の発表によって得られた成果及び問題点◇
CNx:H膜の低摩擦耐久性に着目した本研究成果は、炭素系薄膜の低摩擦発現の可否のみに着目する研究が多い中で、独自性があるといえます。World Tribology Congressは4年に一度開催されるトライボロジーの世界的な学会であり、今回の発表では研究成果を世界にアピールするとともに、世界各国の多く研究者と活発な意見交換が出来ました。同じくコーティング材料を研究するDr. Dugger氏との議論では、O2およびH2O分子がナノ界面に及ぼす化学的作用を議論し、「ナノ界面のSensitivityを考慮すると、in-situ分析を取り入れると良い」というアドバイスをいただきました。本研究ではO2およびH2O分子の化学的作用および反応プロセスまでは言及できておらず、これらの解明が今後の課題です。
◇今後の研究目標及び課題◇
CNx:H膜のトライボケミカル反応による継続的低摩擦界面形成メカニズムの解明が本研究の最終目標です。O2およびH2O分子が低摩擦現象に及ぼす化学的作用とナノ炭素界面の形成プロセスの解明が今後の課題ですので、従来の実験的手法と合わせてin-situトライボケミカル反応分析を実施し、摩擦・摩耗のような機械的な視点と化学的な視点、二つの視点から摩擦界面で生じている現象を明らかにする予定です。