張先駿さんらが光生物における光エネルギー調整メカニズムのサイト依存性を初めて解明

【発表のポイント】

・ 高速励起スペクトル顕微鏡による単細胞生物のクラミドモナスにおけるステ-ト遷移のサイト依存性を初めて解明できた

・ 超解像イメージグによる単細胞レベルでステ-ト遷移とチラコイド膜の構造変化の関連性を議論した

・ ステ-ト遷移が発生した時、LHCIIリン酸化はチラコイド膜の構造変化を起きる必須条件にならない

【概要】

光合成生物の光合成効率は、光化学系 II (光化学系 II; PSII) と光化学系 I (光化学系 I; PSI) の間の励起バランスに依存する。ただし、PSII と PSI の間の励起バランスは、自然スペクトルの不均一性とリアルタイムの変動のためにしばしば乱される。高い光合成効率を維持するために、光合成生物は、可動性集光複合体 II (Light Harvesting Complexes II; LHCII) を介したステ-ト遷移と呼ばれる光エネルギー調節メカニズムを発展した。これまで、細胞内でのステ-ト遷移活性に違いがあるかどうかはまだ解明されていない。さらに、最近の研究では、ステ-ト遷移が発生したときに葉緑体のチラコイド構造の変化が観察されている。したがって、多くの研究者が、チラコイド膜の構造変化がステ-ト遷移に関連しているという仮説を立てているが、強力な証拠は乏しい。博士研究教育院生・張先駿さん(理学研究科化学専攻博士課程後期3年の2年生)、東北大学大学院理学研究科の柴田穣准教授・叶深教授らは、国立基礎生物研究所の皆川純教授との共同研究により単細胞のクラミドモナスにおける細胞内でステ-ト遷移活性のサイト依存性を初めて解明しました。さらに、本研究はクラミドモナスにおけるLHCIIリン酸化はチラコイド膜の構造変化を起きる必須条件にならないことも明らかにした注目すべき報告である。本研究の成果は、単一細胞における光エネルギーの制御機構に関する新しい研究分野を促進することが期待されている。

本研究結果は、2022年9月14日に米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)誌に掲載され、表紙(vol.119 Issue 37)にも採用された。

【論文情報】
題目:State Transition Is Quiet Around Pyrenoid and LHCII Phosphorylation Is Not Essential for Thylakoid Deformation in Chlamydomonas 137c
著者:XianJun Zhang, Yuki Fujita, Naoya Kaneda, Ryutaro Tokutsu, Shen Ye, Jun Minagawa, Yutaka Shibata* (* Corresponding author)
著者情報:張先駿 (東北大・院・理学), 藤田佑輝(東北大・院・理学), 金田直也(東北大・院・理学), 得津竜太郎(基礎生物研究所), 叶深(東北大・院・理学), 皆川純(基礎生物研究所), 柴田穣*(東北大・院・理学)
雑誌:Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)
doi: 10.1073/pnas.2122032119

参考:
化学専攻 有機物理化学研究室(http://sub.web.tohoku.ac.jp/orgphys/)

XianJun ZhangさんのHP (https://zxj5724090.wixsite.com/zhang)