【海外研究集会発表支援プログラム報告】金美賢さんが 2022 Materials Research Society(MRS) Fall meeting にてポスター発表をしました。

◇発表者◇
 金 美賢
 デバイス・テクノロジー領域
 博士研究教育院生2年
 工学研究科 知能デバイス材料学専攻

◇学会名称◇
 2022 Materials Research Society(MRS) Fall meeting
◇開催地◇
 Boston, USA
◇開催期間◇
 2022年11月27日 ~2022年12月3日

◇発表題目◇
 Effect of Cr doping on the electrical property and the phase stability in MnTe thin film.

◇発表内容◇
Manganese-Telluride (MnTe) は室温安定相のα相と高温相のβ相をもつ多形体であり、これら二相間の結晶多形変化に伴って大きな電気抵抗の差を示す。この不揮発的な多形変化を用いることでMnTeは高速かつ省エネルギーを実現できる相変化材料として注目されている。極最近、MnTeの多形変化が熱応力と密接な関係があることが明らかになり、応力・ひずみ誘起相変化の可能性が示唆された。しかし、その相変化温度は450℃以上といった高温であり、ひずみ誘起相変化を期待するには高温である。そこで本研究ではCrTeもα相と同じ結晶構造を有することに着目し、MnTeにCrを添加(CrxMn1-xTe)することで相安定性の制御を試みた。その結果、MnTe二元系ではβからαへの相変化を示すのに対し、CrxMn1-xTeはβ相の結晶構造を維持したままでも大きな電気抵抗変化を示すことがわかった。さらに、特定の組成領域(x〜0.40)では400℃から相変化(β→α)が始まることから、Cr添加は相変化温度制御に有効であることが示唆される。

◇今回の発表によって得られた成果及び問題点◇
MRSは材料科学分野で世界最大級の学会であり、新しい相変化材料を多くの方に紹介することができた。この分野における研究は、既存のアモルファス/結晶の相変化を示す材料に関する研究がほとんどであり、多形変態を示す材料に詳しい研究者は少なかった。ポスター発表だったため質問の時間も長く、異分野の研究者の方々からも興味を持ってもらい、磁気特性の観点など深い内容まで意見交換を行うことができた。また、相変化材料を研究しているProf. R.E. Simpsion からは、光学バンドギャップといった光学特性の変化が他の相変化材料に比べて大きいため、Cr-Mn-Te三元系化合物の屈折率や消衰係数といった光学特性も調べるとより面白い研究になるのではとコメントをいただいた。

◇今後の研究目標及び課題◇
Crを添加することによりCr-Mn-Te三元系化合物ではMnTeとは異なる新しい相変化挙動が得られるが、まだその電気物性・光学物性の差の起源は明らかになっていない。今後は相変化メカニズムを明らかにするために、放射光を利用した測定などによる分析を行なった上で相変化メモリデバイスへの応用可能性を検討する予定である。