鍵 智裕さんらの論文がプレスリリースされました。

多剤耐性菌の最終救済薬であるポリペプチド系抗菌薬の副作用が発症する仕組みを解明

-副作用の原因となる炎症を抑えて多剤耐性緑膿菌感染症の克服に期待-

【発表のポイント】

  • ポリペプチド系抗菌薬(多剤耐性緑膿菌に対する最終救済薬)が、腎臓で炎症(重篤な副作用)を引き起こす仕組みを解明しました。
  • ポリペプチド系抗菌薬が免疫細胞を腎臓へ集積させることを発見しました。
  • ポリペプチド系抗菌薬がインターロイキン-1β(注1)という炎症を引き起こす物質の分泌を促進させることを発見しました。
  • インターロイキン-1βの分泌を抑えると、ポリペプチド系抗菌薬による重篤な副作用である腎障害が治まることを見出しました。
  • ポリペプチド系抗菌薬による副作用の原因である炎症を抑えることで、多剤耐性緑膿菌感染症の克服につながる成果です。


【概要】

 優れた殺菌作用を持つポリペプチド系抗菌薬は、様々な抗菌薬が無効である多剤耐性緑膿菌に対しても有効な抗菌薬として注目を集めています。しかし、ポリペプチド系抗菌薬の投与によって重篤な副作用である腎障害が頻発することが問題となっています。

 東北大学大学院薬学研究科の鍵智裕大学院生、野口拓也准教授、松沢厚教授らの研究グループは、ポリペプチド系抗菌薬が腎障害を引き起こすメカニズムを解明しました。ポリペプチド系抗菌薬は、免疫応答を担うマクロファージという細胞を腎臓に集積させるとともに、腎臓に集積したマクロファージを刺激し、炎症誘導物質であるインターロイキン-1βの分泌を促すことで腎障害を引き起こすことが明らかになりました。

 本研究の成果は、2024419日に科学誌 The Journal of Immunology に掲載されました。

 

 

 

 

 

 

 

 


図1. ポリペプチド系抗菌薬による腎障害誘導機構
ポリペプチド系抗菌薬は尿細管細胞に作用し、マクロファージの集積を促進する物質の分泌を促進する。さらに、ポリペプチド系抗菌薬は腎臓に集積したマクロファージに作用し、NLRP3インフラマソームを活性化することでインターロイキン-1βの放出を促進する。インターロイキン-1βにより炎症反応が惹起され、腎障害が発症する。

【用語解説】
注1. インターロイキン-1β
主に単球やマクロファージで産生されるタンパク質で炎症や感染防御に重要な役割を果たす。代表的な炎症性サイトカインの一種である。

詳細(プレスリリース本文)