【海外研究集会発表支援プログラム報告】江村玲さんが HSP 2024 にてポスター発表をしました。
◇発表者◇
江村 玲
人間・社会領域
博士研究教育院生2年
文学研究科 総合人間学専攻
◇学会名称◇
37th Annual Conference on Human Sentence Processing (HSP 2024)
◇開催地◇
アナーバー、アメリカ
◇開催期間◇
2024年5月16日 ~ 2024年5月18日
◇発表題目◇
Do Higher Reanalysis Costs Promote Lingering Memory of Initial Misparse?: Evidence from Japanese Garden-Path Sentences
◇発表内容◇
本研究の目的は、一時的曖昧文の再分析コストと、初期解析の記憶の残留の関係を調べることである。一時的曖昧文とは、複数の解釈がありうる文のことを指し、読み手は解釈A(初期解析)から解釈Bへの再分析が必要となる。この初期解析の記憶が残り続けるという現象があるのだが、本研究は再分析コストが大きいほど初期解析の記憶が残りやすくなるという実験データを示した。
この初期解析の記憶はつまり誤った解釈であるので、読み手の誤解を引き起こす原因となる。そのため、本研究は円滑なコミュニケーションの実現に貢献すると予想される。
◇今回の発表によって得られた成果及び問題点◇
本研究は「心理言語学」と呼ばれる分野に位置する研究であるが、当分野が中心の分野となる国際学会は世界で二つしかない。そのうちの一つが、今回参加したHSPである。ゆえに、自分の分野で世界を牽引する研究者や、似たようなテーマを持つ学生から、意見をもらうことができた。日本では、研究者が少ない分野なので、自分の研究がどのくらい世界で認められるのかを体感するのが難しいが、今回の学会に参加したことで、本研究への研究課題は、世界でも通用するものであることがわかった。
一方で、本研究の課題点も見えた。本研究の対象言語は日本語であり。それは、日本語の文法の制限があり、仮説を検証する実験デザインとして不十分になってしまうことである他の言語で実験を行うなどして、実験結果の信頼性と妥当性を高めることが課題である。
◇今後の研究目標及び課題◇
今後は、実験のデザインを工夫することで、信頼性と妥当性の高いデータを示すことを試みる。その暁に、国際誌に掲載することを目標とする。