【海外研究集会発表支援プログラム報告】宇田川 喜信さんがµTAS 2024にてポスター発表をしました。
◇発表者◇
宇田川 喜信
デバイス・テクノロジー領域
博士研究教育院生2年
工学研究科 バイオ工学専攻
◇学会名称◇
International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (µTAS 2024)
◇開催地◇
モントリオール・カナダ
◇開催期間◇
2024年10月13日~2024年10月17日
◇発表題目◇
Porous membrane electrode devices for in situ electrochemical measurement of alkaline phosphatase activity in human gut models
◇発表内容◇
再生医療や創薬において、ヒト細胞を用いた臓器モデルを構築できる生体模倣システムが注目されている。生体模倣システムでは、微小流路デバイスや多孔膜を用いることで、生体に近い培養環境を形成できるため、信頼性の高い臓器モデルを作製できる。しかし、作製した臓器モデルに対する評価システムが不足していることが課題である。そこで本研究では、デバイス内で細胞機能を評価するため、電気化学センサを搭載した生体模倣システムを開発した。
本研究では、ヒト腸管モデルを作製してアルカリホスファターゼ(ALP, alkaline phosphatase)活性の電気化学計測を行った。本デバイスは細胞とセンサの距離が非常に近いことから、従来法に比べ短時間の処理で計測を行うことができ、処理により生じる細胞毒性を低減することに成功した。これによって、同一サンプルを用いた長期的な評価を達成した。さらに、薬剤処理におけるALP活性の変化を計測することに成功し、毒性試験のバイオマーカーとして有用であることを実証した。
◇今回の発表によって得られた成果及び問題点◇
本研究では多孔膜上に細胞を培養するため、その孔サイズの選定は重要である。今回の発表で同様の膜を扱っている研究者と現在直面している課題について意見交換することができ、研究を進める上で有益な情報を得ることができた。一方で、電気化学を扱う研究者が多い学会ではなかったこともあり、計測についてあまり関心を持ってもらうことができなかった。
◇今後の研究目標及び課題◇
これまでに本システムを用いて、ALP活性、一酸化窒素、グルコースなどの電気化学計測を達成している。今後は新たなバイオマーカーの計測や同時計測に向けた電気化学デバイスの開発を進める。さらに、微小流路などを活用して、より生体を模倣したモデルの構築と評価を目指す。