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概要

Co46

学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.4607有人宇宙飛行や無人機による宇宙探査では、宇宙から地球へ帰還する際に大気圏再突入カプセルと呼ばれる乗り物を用いています。過去には、アポロ宇宙船の司令船や、小惑星探査機はやぶさのサンプルリターンカプセルなどが研究開発され、大気圏再突入カプセルとして用いられてきました。この再突入カプセルが宇宙空間から大気圏に再突入すると、音速の10?20 倍の速度で飛行することによって数千℃に加熱された大気に晒されますが、減速して音速の2?3 倍以下の速度で飛行する際には、今度はカプセルが安定して飛行しなくなる状態となることがあります。この現象は動的不安定現象と呼ばれ、主としてカプセルがピッチ方向へ自励振動するというもので、振動の振幅が30°を超えるようなこともあり、パラシュートの展開の妨げとなり、搭載された機器や搭乗員の安全性に関わるなど、宇宙ミッションの安全・確実な遂行に悪影響を与えています。このカプセルの自励振動の低減と現象の解明を目的として、風洞試験や数値シミュレーションによる流体解析を行っています。このうち風洞試験では、音速程度の空気の流れの中にカプセルの縮小模型を設置し、自励振動の振幅や振動数といったデータやカプセルまわりの流れ場の解析を行います。そして得られた結果から、模型形状の違いが自励振動や流れ場にどのような影響を与えるのか、また、どのような形状ならば自励振動を抑えることができるのかについての研究を行ってきました。本研究では、カプセル側面での流れのはく離・再付着現象に着目して形状を変えて試験を行った結果、自励振動を低減できるカプセル形状を明らかにすることができました。さらに、スパコンを用いた数値シミュレーションも援用することにより、実験からは判断の難しい複雑な流れ場の理解や振動原因の特定を行っています。本研究によって最終的には、将来の宇宙探査における次世代の大気圏突入・再突入カプセルを設計する際の設計指針を得ることを目指しています。【発表のポイント】・ 抗がん剤や放射線治療に抵抗性を示す腫瘍に対する新しい治療戦略の有効性を、マウスを用いた実験で実証しました。・ 転写因子※ 1 Nrf2 の活性化を伴う治療抵抗性※ 2 の腫瘍に対して、周囲の正常細胞のNrf2 を活性化させることで、腫瘍の進行を抑制できることを明らかにしました。・ 転写因子Nrf2 の活性化は正常細胞を防御する役割もあり、副作用の少ない治療法になると期待できます。【概要】転写因子Nrf2 の活性化は、肺がんや食道がんなど様々ながんで見られ、がん細胞に抗がん剤や放射線に対する治療抵抗性を獲得させることで患者の予後を悪化させます。このようながんに対して、がん細胞のNrf2 を抑制する治療法が開発されていますが、副作用の心配もあり、現在はまだ実用化されていません。元博士研究教育院生の林真貴子さん(現NYU Langone Medical Center勤務)は、東北大学東北大学大学院医学系研究科の鈴木未来子准教授、山本雅之教授らと共に、がん細胞のNrf2 を抑制するのではなく、がん周囲の正常細胞(特に免疫細胞)においてNrf2 を活性化させることで、がんの進行を抑制できることを、マウスを用いた実験で実証しました。Nrf2 の活性化は正常細胞を防御する役割もあるため、副作用の少ない治療法になると期待されます。今回の研究成果は、日本時間2020 年7 月8 日に米国癌学会の学術誌「CancerResearch」のオンライン版で公開されました。(URL: https://cancerres.aacrjournals.org/content/80/16/3331)【用語解説】※ 1 転写因子:DNAに結合し、遺伝子の発現を制御するタンパク質の総称。※ 2 治療抵抗性:標準的な治療を行っても、効果がみられないこと。「 大気圏再突入カプセルの自励振動現象の解明」「毒を以て毒を制す」悪性腫瘍の治療法逆転の発想による治療抵抗性腫瘍の新しい治療戦略野村 将之先端基礎科学領域博士研究教育院生3年理学研究科化学専攻模型形状図および気流中で自励振動しているカプセル模型のシュリーレン可視化画像【図】 周囲の正常細胞におけるNrf2活性化による腫瘍抑制効果 野生型マウスにNrf2 活性化腫瘍を作らせると、腫瘍が増大する(左)のに対し、全身でNrf2 を活性化させたマウスでは腫瘍が抑制される(右)。News 林真貴子さんらの論文がプレスリリースされました現 NYU Langone Medical Center(ニューヨーク大学Langone医学研究所)ポスドク(平成28 ~令和元年度 博士研究教育院生)林 真貴子