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概要

Co46

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4606近年の高齢化社会では、加齢黄斑変性(AMD) や網膜色素変性症(RP) のような眼疾患により失明する患者数が増加しています。これらの疾患では網膜中の視細胞の一部が変性し、光信号を電気信号に変換できなくなります。この疾患に対する遺伝子や幹細胞などの医学治療方法はまだ確立されていません。一方、視細胞以外の網膜細胞は正常に機能していることが報告されており、残存網膜細胞を最大限に利用して視覚を再建できれば患者には大きな福音となります。視覚再建のためには、変性した視細胞の光電変換機能と神経刺激機能を工学的に模擬する人工網膜の開発が必要となります。これまでの人工網膜はカメラや信号発生装置など多数の複雑な部品からできており、使用者には大きな負担であり、QoL(Quality ofLife) が低下します。本研究では工学と医学の連携を深化させ、高QoL の視覚を再建できる眼球内完全埋め込み型広視野角人工網膜を開発しています。図1 に眼球内完全埋め込み型人工網膜の概要を示します。三次元積層人工網膜チップにおいて、上層の視細胞チップにより外部の光信号を電気信号に変換し、TSV(ThroughSilicon Via) 経由で、下層の視覚情報処理・刺激電流生成チップに転送し、増幅やフィルタリングなどの信号処理を行い、光量に対応する刺激電流信号を生成します。その後、刺激電流信号を上層の視細胞チップに送って、刺激電極で残存する網膜細胞を電気刺激します。三次元積層人工網膜チップをフレキシブル基板に実装することにより、処理回路面積の縮小、画素数の増大、多機能化、眼球内完全埋植を同時に達成でき、QoL の高い人工網膜を実現できます。これまでに試作したチップで、光量に応じた周波の刺激電流を生成できることを確認できました在は、低ノイズ、低消費電力、エッジ強調などの視覚情報処理を実現できる新しい三次元積層人工網膜チップを設計・試作・評価しています。今後は、新しい人工網膜チップをフレキシブル基板に実装し、完全埋め込み型広視野角人工網膜の実現を目指します。私たちの周りには常に情報が溢れていますが、誰しも、好きなものの方をつい見てしまうという経験があると思います。しかしながら、どんなに好きなものがあるからといって、目の前の相手から目を逸らしてしまっては、コミュニケーションが成り立たなくなってしまうことは想像に難くないでしょう。目の前の相手とのコミュニケーションを維持するために、私たちはどのようにして、つい『好きなもの』に向いてしまう注意をコントロールしているのでしょうか。自閉スペクトラム症( 自閉症) は、社会的コミュニケーション、限局的な興味や強いこだわり等を特徴とする神経発達障害です。人の顔を見ない、アイコンタクトが取れないといった特異的な注意パターンは自閉症児の養育者から最も多く報告される異常の一つであり、注意機能の障害は自閉症の特徴の一つとして知られ、様々な検討が行われてきました。近年の研究では、自閉症者は、『好きなもの』に向いてしまう注意が極端に強いために、人への注意が減少することが明らかにされています。さらに、生後間もない乳児期には、人への注意はほとんど障害されていないことが明らかにされており、自閉症者は、人の顔に注意を向ける機能が先天的に障害されているわけではなく、『好きなもの』に対する注意をコントロールする能力の発達が、健常者とは異なることが示唆されています。本研究では、『人』と『物』に対する注意をコントロールする能力がどのようにして発達するのか、視線計測機とMRI による脳画像を用いて検討しています。自閉症者と健常者の違いがいつ、どのように生じるのか、『人』と『物』に対する注意という観点から自閉症と健常者の発達メカニズムを明らかにすることによって、障害につながる脳の働きを予測したり、先回りして対応するなど、自閉症の早期発見や早期支援を実現することに貢献したいと考えています。「 工学と医学の連携深化による高QoL視覚再建へ」「『人』に対する注意の発達メカニズム:自閉症との比較から」銭 正?デバイス・テクノロジー領域博士研究教育院生3年工学研究科機械機能創成専攻小林 亜紀子人間・社会領域博士研究教育院生3年医学系研究科医科学専攻