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概要

Co46

学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.4605私たちが研究しているのは、言葉がわかるコンピュータを実現することを目指す、自然言語処理とよばれる研究分野です。私たち人間は普段、日本語や英語などの言語を用いて情報伝達を行っていますが、これをコンピュータで実現することは簡単なことではありません。人間が情報伝達に用いる言語(自然言語)は、単語の意味や文の構造に多義性や曖昧性があり、表現される内容が文脈に大きく依存します。そのため、あらかじめ決められた規則通りの処理を行うコンピュータでは、自然言語を文脈に応じて柔軟に処理することは難しいのです。しかし近年、機械学習と呼ばれる、データから処理方法を自動的に構築(学習)する技術が発達したことで、自然言語処理においても、大量のテキストデータから変換規則を学習し、高い性能を実現することが可能になってきました。例えば、日本語と英語の対訳データを用いて言語間の変換規則を学習することで、翻訳のシステムを作ることができます。実際に、機械学習を用いた手法によってGoogle 翻訳の精度は飛躍的に向上しました。このように、機械学習によって自然言語処理技術は実用レベルになり、社会実装が着実に進められています。さて、私が研究している質問応答というテーマは、機械学習が自然言語処理に導入されてもなお、難しい問題の一つです。すでにスマートフォンなどで、ユーザが投げかける質問に答えてくれるシステムは存在しますが、例えば「徳川家康が生まれたのは現在の何県?」のような、具体的な事物に関する知識が必要な質問に答えることはいまだ困難です。これは、知識が無数に存在し、かつコンピュータが扱いやすい形では整理されていないためです。そこで私たちは、質問文に関連する文書を検索するモデルと、文書の内容から質問の答えを導く読解のモデルを組み合わせることで、文書に書かれている情報を利用して質問に回答できるシステムを研究しています。出不精になりがちな昨今ですが、みなさま運動はしていますか?適度な運動をして健康を心がけたいですね。先ほど調べたところ、ヒトが意識的に動かせる筋肉は400 近くあるそうです。そのため、所望の運動を実現するには、400 の筋肉を適切に働かせる必要があります。このとき、働かせる筋肉の組み合わせの数は膨大なものになりますが、私たちは容易に適切な組み合わせを選択し、瞬時に所望の運動を実現できます。すなわち、私たちは1 つの目的のために400 の群勢を適切に導く力を持っているのです。私の研究の大目的はこの群勢を指揮する力、動物が普遍的に持つ優れた運動生成メカニズムを解明し、工学的に応用できる形にすることです。目的達成の素直なアプローチとして、運動生成に関わる神経系の働きをすべて解析することが挙げられますが、現実的ではありません。また実現できても複雑なメカニズムでは応用が困難になります。そこで私は、動物を解析するのではなく、動物の振る舞いの再現に必要な最低限のルールを構成し、類似した形状を持つロボットで検証することで動物の運動生成原理の考察を進めるアプローチを採用しています。複雑な生体システムに眠る運動生成原理をシンプルな形で抽出するとともに優れた動物規範ロボットの開発という工学的応用を達成できる一粒で二度おいしいアプローチです。これまでにもネコやサカナ、昆虫やムカデなど、さまざまな動物規範ロボットが開発され、各動物種の運動生成原理の考察が進められてきました。しかしながら、これらの研究はネコ型ロボットならいかに脚を動かすか、サカナ型ロボットならどう尾部を動かすか、といった身体の一部の運動に限定された考察に留まっています。そこで私の研究では、脚や胴体さらには頭部や尾部をも含めた全身の運動をどのように生成しているのかについて研究を進めています。現在は身体部位間の感覚情報を相互に教え合うことが優れた運動能力を生み出す鍵ではないかと考察を進めています。「 言葉と知識を駆使できるコンピュータの実現を目指して」「 動物の運動に学ぶ優れた制御メカニズム」鈴木 正敏情報・システム領域博士研究教育院生3年情報科学研究科システム情報科学専攻鈴木 朱羅情報・システム領域博士研究教育院生3年工学研究科電気エネルギーシステム専攻