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概要

Co46

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4604抗体医薬とは抗体を利用した医薬品で、近年幅広い疾患に適用されています。特定の細胞機能を特異的に制御することができ、従来の低分子医薬品と比較して副作用が小さいという特徴があります。しかし抗体は非常に分子量の大きなタンパク質であり、細胞の中に存在する標的をターゲットとすることができませんでした。しかし疾患の原因が細胞内に存在するということも多くあり、特に核の中で起きている遺伝子の機能制御、いわゆるエピジェネティクスの異常は様々な疾患の原因となることが知られています。そこで本研究では核内でエピジェネティック制御に関わるタンパク質を人為的に制御するツールの開発を目指しました。この新技術の開発は医薬品への応用だけでなく、未だ明らかとなっていないエピジェネティック制御の分子機構を解析するための足がかりとなることも期待できます。抗体医薬品の大きな特徴は、標的のタンパク質と特異的に強く結合することで活性を阻害するということです。つまり標的のタンパク質と特異的に強く結合できる低分子のペプチドを人工抗体として取得することができれば、核内の標的に作用することも可能であると考えました。そこで着目したのが二重環状ペプチド(BP: Bicyclic peptide)です。これはスクリーニングによって特定の標的に結合するものを取得することがきる低分子ペプチドです。また二環状構造をとることにより標的との特異性や標的機能の阻害を強めるという特徴があります。そこでスイス・EPFL との共同研究により、核内でエピジェネティック制御を行う標的に結合するBP を取得しました。このBP を実際の細胞の中に導入することにも成功し、現在その機能解析を行っているところとなっています。この技術が確立することで、より幅広い医薬の可能性を見出していけるのではないかと考えています。微生物は植物と密接に関連し合い共生関係を築いています。なかには栄養源や植物ホルモンの生成により植物の生育を促す微生物や、病原抵抗性を付与する微生物が存在します。ブラディリゾビウム(=Bradyrhizobium ) 属細菌は、ダイズなどのマメ科植物の根に根粒という組織を形成して共生関係を築き、宿主マメ科植物(ダイズ)に窒素を供給することでよく研究されています。さらに、当属細菌は非マメ科植物であるサトウキビ・イネ・サツマイモなどの根や、植物根圏土壌から高頻度に見出されることから、土壌植物系の陸域環境に適応するキーストーン細菌であることが近年明らかになってきました。しかし、なぜBradyrhizobium 属細菌が植物根圏に柔軟に適応できるのか、どのような機能をもつのか、不明な点が多く残されています。私はイネ科植物であるソルガムに着目して、その組織内に棲息するBradyrhizobium 属細菌の多様性や機能を研究しています。具体的には、圃場で栽培したソルガムの根から当該菌を分離培養しゲノム解析と種々の生理試験を行っています。ソルガム根からBradyrhizobium 属細菌を分離すると、ダイズに根粒共生を行う株だけでなく、根粒形成能を完全に欠いている株が見出されました。したがって、ソルガム根にはダイズ根粒とは異なる性状のBradyrhizobium 属細菌が棲息していることが示唆されました。これら分離株は系統的に多様であり、遺伝子保存性も異なっていました。特にCO2 の300倍もの温暖化係数をもつ温室効果ガスN2O をN2 に還元する遺伝子を保有する株が見出されました。実際に活性を測定してみると、N2O 還元菌として従来報告されていた根粒菌株よりはるかに高いN2O 還元活性が認められ、陸域からの温室効果ガス削減に応用性が期待できます。また、ソルガム根由来の株から植物免疫と関連の深いタンパク質分泌系に特徴がある株が見出されました。これらの結果は植物内生細菌の適応進化という観点からも興味深く、今後はソルガム根内部に棲息しているBradyrhizobium 属細菌の比較ゲノム解析を中心にその生態を究明したいと考えています。「 人工抗体によるエピジェネティクスの人為的制御の試み」「 植物体内に棲息する細菌の生態」高橋 大輔生命・環境領域博士研究教育院生3年農学研究科応用生命科学専攻原 沙和生命・環境領域博士研究教育院生3年生命科学研究科生態システム生命科学専攻