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概要

Co45

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.45〒980-8578 仙台市青葉区荒巻字青葉6-3 TEL:022-795-5749 学際高等研究教育院 http://www.iiare.tohoku.ac.jp/ E-mail: senryaku@iiare.tohoku.ac.jp総合戦略研究教育企画室東北大学学位プログラム推進機構08東日本大震災後、宮城県の沿岸部では、海岸に沿って全長約240km の防潮堤が建設されています。巨大なコンクリートの防潮堤( グレーインフラ) がそびえる自治体がある一方で、復興まちづくりの一環として、住民の植樹活動による海浜緑地の整備が進んでいる自治体もあります。とりわけ海浜緑地整備が進む地域では、自然環境保全や景観の回復、レクリエーションの機能を兼ねた復興公園、森の防潮堤や防災自然公園ベルトの建設( グリーンインフラ) が進んでいますが、海浜緑地整備の状況は自治体によって異なり、人の健康・福祉への効果は明らかにされていません。そこで、本研究では、震災後の街づくりを通じたインフラ整備が、沿岸被災地の住民の健康とwellbeing( 心身と社会的な幸福の実現) に与える影響を明らかにし、それを踏まえた復興地の環境整備のあり方を提案することを目的としています。従来の防災に関する環境整備の議論と居住環境の改変が地域住民の健康、wellbeing に及ぼす影響に関する社会疫学的な議論とを融合し、グリーンインフラのヘルスプロモーションとしての価値を提起する形で研究を進めてきました。これまでの研究で、被災者を対象としたデータを解析し、コンクリート型の護岸ではなく植生を伴う護岸整備が進む地域に暮らす人々の間で、震災後の主観的健康感が高いことを確かめました。また、歴史的背景として海と生活者とのつながりが深い沿岸地域では、「海が見える場所に暮らす」といった海の可視性という地理的環境特性が、復興過程において、被災によって低下した人々のメンタルヘルスの改善に寄与する効果を確めました。これらの知見は、インフラ整備の違いにより住民の健康状態に違いが生じている可能性を初めて示唆したものです。今後は、これまでの解析結果を精査し、人々の健康に寄与する居住環境整備の方策について研究成果としてまとめてく予定です。生命を育む星・地球は、どのようにして誕生したのでしょうか?太陽系の外にも、地球のような惑星は存在しうるのでしょうか?これらの謎を解くうえでは、まず「地球がどのような天体であり、どのような形成進化史を辿ってきたのか」を理解する必要があります。地球の特徴を理解する上で、地球と他の惑星との比較は有意義な知見をもたらしてくれます。本研究では、火星隕石や探査機のデータに基づき、既存の地球モデルと直接比較が可能な火星の化学組成・内部構造モデルの構築に成功しました(クロスオーバー第44号参照)。本モデルにより、火星内部が地球に比べ揮発性元素に富み、その金属核の質量・体積比は地球核に比べ小さいという、火星と地球の違いが示されました。これらの違いは、太陽系初期における酸素や金属の空間分布や、各天体が集積に要した時間を反映していると考えられます( 図)。そして、地球よりも火星の方が内部の熱源である放射性元素の濃度が高かったものの、表から熱を逃がしやすかったために、地球よりも先に冷え固まってしまった可能性も示唆されました。また、地球の化学組成の説明に必要な、集積する物質の組成が時間変化する複雑な形成史は、火星組成の説明には不要であることも分かりました。地球の月は、原始地球と火星サイズの天体の巨大衝突により形成したとされていますが、各天体の化学組成は未解明でした。本研究では、衝突天体が火星に似た化学組成を持っていたと仮定することで、現在の地球や月の化学組成の再現にも成功しました。これらの成果は、火星に似た天体の形成が普遍的であった可能性を示唆します。一方で、遥かに複雑な形成史を辿った地球のような惑星が形成する可能性は、非常に限られたものであるといえます。今後議論の対象を金星、水星、そして系外惑星へと広げることで、惑星の起源と進化に関する更なる知見を得たいと考えています。「 被災地におけるインフラ整備の違いが地域住民の健康に与える影響」「 惑星の生い立ちを探る」田代 藍人間・社会領域博士研究教育院生3年環境科学研究科先端環境創成学専攻吉崎 昂先端基礎科学領域博士研究教育院生3年理学研究科地学専攻図: 太陽系天体の揮発性元素量と集積に要した時間の関係