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概要

Co45

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4504一つの分子内に親水部と疎水部の両方をあわせ持った高分子を両親媒性高分子といいます。この両親媒性高分子を水面上に展開し圧縮することで、高分子鎖中の親水部を水相側、疎水部を気相側に向けた単分子膜を作製することができます(図a)。このような単分子膜の膜厚は分子鎖長スケール(~10?9m)であり、そこへ固体基板を垂直に浸漬することで、この単分子膜を一層ずつ固体基板上に転写することができます(図b)。このようにして得らえた膜を「高分子ナノシート(Polymer Nanosheet)」と呼び、使用した両親媒性高分子の設計に応じて、熱や力学、光学特性といった様々な機能を有する高分子ナノシートを作製することができます。私はこのような高分子ナノシートのなかでも、かご型シルセスキオキサン(SQ) と呼ばれるケイ素系無機骨格(SiO1.5) と有機置換基からなる分子を用いた有機? 無機ハイブリッド高分子ナノシートに着目して研究を行っています。SQ を有する高分子ナノシートは優れた熱特性を有する一方で、室温・大気圧雰囲気下といった非常に温和な条件下における紫外光照射により、有機部位の分解を伴いながらSiO1.5 骨格の光酸化によってSiO2 超薄膜を作製することができます。( 図c)。これまでの検討から、得られたSiO2超薄膜は膜内に10 nm以下の細孔を有するナノ多孔質SiO2 超薄膜であることが分かっており、有機部位と無機部位の割合を厳密に調整することで、SiO2 超薄膜中の細孔サイズをnmスケールで制御することに成功しています。また、興味深いことに得られたナノ多孔質SiO2 超薄膜は、細孔サイズに応じてイオン透過性を制御することもできます。現在、このような高分子ナノシートを前駆体として得られるナノ多孔質SiO2 超薄膜の表面機能化を行い、分子分離膜や電気化学的な( バイオ) センサ、マイクロ流路デバイスなどへの応用を目指して研究を行っています。細胞の中心体は微小管形成中心として機能し、分裂期には紡錘体極となり、娘細胞への均等な染色体分配を担う細胞小器官である。中心体の複製は厳密に制御され、制御機能の異常は中心体数の増加をもたらす。中心体数の増加は多くのがん細胞に観察され、がん細胞の特徴である。中心体が過剰な状態で分裂が開始すると、多極性紡錘体を形成した細胞は、分裂期細胞死により死滅する。細胞は過剰な中心体をまとめるクラスタリング機能によって、二極性紡錘体を形成し細胞分裂を完了する。クラスタリング機能は正常細胞には不要で、その機能の阻害はがん細胞特異的に殺細胞効果を示すと考えられる。そのため、近年、クラスタリング阻害剤はがん治療薬として注目された。しかし、クラスタリング阻害剤は中心体数が増加した細胞にしか効果は期待できない。一方以前より、そのメカニズムは未だ明らかではないが、DNA 損傷後細胞の中心体数の増加(DNA damageinducedcentrosome amplification(DDICA)) が示されている。これまでの解析により、がん細胞はよりDDICA を起こすことが明らかになっている。そのため私は、始めにDNA 傷害性薬剤や放射線照射によって、がん細胞にDDICA を生じさせ、その後にクラスタリング阻害剤を投与することで、がん細胞に多極分裂を起こし、がん細胞特異的に細胞死を引き起こす新しいがん治療法が開発できると考えた( 図1)。上記の治療法を開発するため、私はまずDDICA の生じる分子メカニズムについて解析した。これまで、DNA 損傷後、私はがん抑制遺伝子であるBRCA1 が核内から中心体へのシグナル伝達を担い、中心体複製を制御する因子を活性化することを明らかにした。今後は、中心体を標的としたがん治療法の有効性をさらに検討する予定である。「 FunctionalNanoporousMaterials fromPolymer Nanosheets」「 中心体のDNA 損傷応答機構の解明と新しいがん治療法への応用」石﨑 裕也物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年工学研究科 応用化学専攻斉 匯成生命・環境領域博士研究教育院生3年医学系研究科 医科学専攻研究教育院生の研究内容紹介