ブックタイトルクロスオーバーNo.41

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概要

クロスオーバーNo.41

07学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.41研究教育院生の活躍出会いと学びに満ちた知の合宿 ~第11回HOPE Meeting参加報告~2019 年3 月3 日から8 日まで、日本学術振興会主催の若手研究者向けミーティング、第11 回HOPE ミーティングに参加しました。本ミーティングは、「アジア・太平洋・アフリカ地域等から選抜された優秀な大学院生等を対象として、ノーベル賞受賞者などの世界の知のフロンティアを開拓した人々との対話、同世代の研究者との交流、さらには人文社会分野の講演や芸術プログラムを通じて、科学者としてより広い教養の涵養と人間性の陶冶を図り、彼らが将来のアジア・太平洋・アフリカ地域等の科学研究を担う研究者として飛躍する機会を提供するもの」です。ノーベル賞受賞者講演、少人数でのグループディスカッション、研究発表(1 分間のフラッシュトークとポスター発表)、若手同士で構成されたグループで行うチームプレゼンテーション等から成る、非常に熱い1 週間を過ごしました。ノーベル賞受賞者講演では、各先生方の研究内容はもちろんのこと、会場から出る質問も変化に富みbrainstorming なものでした。Ciechanover 教授、Yonath 教授は自身のタンパク質分解・合成の基礎研究が抗がん剤・抗生物質として世界中の患者を救っている責任の重さと基礎研究の重要性について、天野教授は同時にノーベル賞を受賞された岡崎教授との師弟関係を振り返りながら、発光ダイオード発見に至った経緯、そしてこれからの若手研究者養成の環境セットアップに対する情熱を語ってくださりました。梶田教授は「ニュートリノに質量がある」というそれまでの原理を覆すデータを得た時の興奮と、既存論に騒動を巻き起こす不安、カミオカンデの事故からの復旧など、困難に立ち向かう姿を見せてくださいました。Ada Yonath 教授は、今回のミーティングで参加されたノーベル賞受賞者の中で唯一の女性だったこともあり、グループディスカッションは女性が多めの印象。最初に「Work-Life バランスの質問はダメよ。私バランスって嫌いなの。私の人生の中、研究というものがあって、それと同じように子育て、ノーベル賞という出来事が起こった(happened)と言うだけの話。だから、どうしたら私のようになれるかなんて聞かないでね。私は自分の人生を生きてきただけ(I have done everything what I want to do.)。あなたたちは、自分の人生を生きている?」と造詣と示唆に富んだ言葉から始まり、性別関係なくその生き方に感銘を受けたのでした。Ferringa 教授は、昨今叫ばれる「科学の重要性」について例を交えて紹介してくださいました。「Science and technology において、現代はtechnologyを重視しすぎているように思う。例を話そう。我々は、例えば日本からアメリカに行きたくて飛行機を作ったのではない。ヒトは空を自由に飛ぶ鳥類を見て、鳥類のように空を飛びたいと思った。そこで鳥の飛び方を様々に研究し、私たち一人一人が鳥のように飛ぶことはできなかったが、飛行機が発明された。結果として飛行機は我々にとって今や欠かせない交通手段となった。前者の、鳥が飛ぶメカニズムを調べる研究がscience であり、後者の飛行機エンジンや翼の発明がtechnology だ。今君達は、自分の研究がどちらかわかるかい。どちらも大切だが、science 無くしてtechnology は無い。だからscience は大切なんだ。」このような講演の機会に恵まれただけでなく、ポスターセッションではノーベル賞受賞者をはじめとして日本の科学界を牽引する先生方が自分のポスターまでいらしてくださってディスカッションできる。こんなに恵まれて嬉しい機会はありませんでした。ちなみに、開催地が沖縄でしたので、亜熱帯の植生を外に見ながら、沖縄文化の体験プログラムを行う機会も用意されており、ホテルのルームメイトを含めすっかり打ち解けた最終日の首里城観光は、みんな笑顔の写真ばかりの素敵な思い出です。チームプレゼンテーションは4 つのテーマから一つを選び、その解決策をチームで考え発表するものでした。寸劇や、テレビのニュース形式、いずれのグループも工夫とユーモアに富んだ発表となり、盛り上がりました。私の所属チームは「世界中の若手を繋いでコラボするには?」を選び、架空のジャーナルアプリとマッチングアプリ( ! )の発想を組み合わせて、論文執筆や実験手技のトラブルを解決、将来的に共同研究として成果を一緒に発表するコンセプトの発表を行いました。9 人で4 日間しか無い中スライドや脚本を完成させる作業はかなりの集中力、コミュニケーション(英語)能力、マネジメント能力を要するハードなものでしたが、非常に充実していました。最終日には個人、チームプレゼンの表彰があり、最優秀ポスタープレゼン賞、ポスタープレゼン賞の中から一人選ばれる運営委員長賞HOPE 賞、及び最優秀チームプレゼン賞を受賞することができました。本当に驚くとともにとても嬉しく、日々ご指導いただいている先生方、皆様に感謝申し上げます。発表にあたっては、「異分野の研究者(一般人ではなく、あくまで科学のトレーニングを受けた専門家である、という理解が重要)にいかに伝わるように自分の研究を発表するか」というトレーニングを学際高等研究教育院の全領域合同研究交流会にて受けていたことが間違いなく大きかったと思っています。学際高等研究教育院のサポートは、様々なところで私の中で生きています。来年開催の第12回HOPE Meeting参加申し込みはすでに始まっていますので、東北大学からの参加者が増えることを強く願っています。この文章を読んでくださっている教育院生の方へのメッセージを最後に寄せて、筆を置きます。機会を存分に活用し、限界まで自らを鍛錬せよ。林 真貴子生命・環境領域博士研究教育院生4年医学系研究科医科学専攻右から4番目が林さん