ブックタイトルクロスオーバーNo.40

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概要

クロスオーバーNo.40

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4006巨大地震発生前に何らかの現象を基に、その発生可能性を評価することができるのかに私は興味を持って地震先行現象について研究しています。地震前に先行する異常現象には、地震活動の統計的変化、電磁気的な異常現象や化学物質の濃度異常変動などが報告されています。地震は、地殻の破壊現象と見ることができ、最終的な大きな破壊に先行して小さな割れ目が発達する過程で、微小地震や地震活動の統計的変化が観測されると考えられます。また、地殻中の割れ目の発達は、物理的な環境変化を引き起し、岩石の電磁気的特性の変化に伴う電磁気的な異常現象や地殻中の物質移流に起因する化学物質濃度の変化が地震によって引き起こされます。このような状況の中で、私はラドンという化学物質の濃度変化に着目した研究を行なっています。ラドンは、無色・無臭の気体で半減期が約3.8 日の放射性同位元素で、地殻中に存在するラジウムが放射壊変することで生成されます。地殻中のラドンは、割れ目などを通って地表面に達し大気中へ散逸します。そのため、大気中ラドン濃度の変動の情報には、地殻中の割れ目の発達度や歪状態の情報を含んでいて、その変化から地震発生予測に関連した情報を抽出することが可能であると期待されます。これまでの研究例では、ラドン濃度の異常変動の定義が曖昧で研究ごとに異なった基準で異常度が測られていました。そこで本研究では、特異スペクトル変換法という時系列解析手法を用いてラドン濃度変動データから異常変動部分を客観的に抽出し、地震活動とラドン濃度変動との関連を定量的に検証しました。その結果、積算地震モーメントの変化と大気中ラドン濃度が異常に変化した時期が一致していることを明らかにしました。現在は、地震前にべき乗則に従うラドン濃度積算変動のメカニズムの解明や統計的機械学習を用いた季節変動の要因推定などを行なっています。ラドン濃度の異常検出により、地震発生リスクを定量的に評価することを目標に、今後研究を進めていきたいと考えています。光イオン化とは、入射光子によって化学種から電子が放出される物理過程です。光子の吸収と電子の放出の間にはEisenbud-Wigner-Smith(EWS) 遅延時間と呼ばれる、アト(10 の? 18 乗)秒スケールの一瞬とも言える超短時間の遅れが生じます。現在、EWS 遅延時間を計測する方法には赤外線(IR)パルスを用いた方法が利用されています。しかし、IR 電磁場は化学種のクーロン場と擾乱し合うため、データ解析でその効果を排除しないといけません。私たちの研究グループは、IR パルスを使わず、自由電子レーザー(free electronlaser; FEL)を用いて1 光子過程と2 光子過程のEWS 遅延時間差を直接計測することを目的に研究を行いました。利用したFEL 施設はイタリアに位置するFERMI です。FEL の生成に自己増幅自然放射(self-amplified spontaneousemission; SASE)方式を採用している多くの施設と違って、FERMI では高利得高調波発生(high-gain harmonicgeneration; HGHG)と呼ばれる、シード光を活用した方式を採用しています。このHGHG 方式を採用することで、空間的にも時間的にも位相の揃った完全可干渉な光パルスを複数の波長で同時に生成することに成功しています。現在、この技術が可能なFEL 施設はFERMI が唯一であり、今まではできなかった新しい位相制御研究が可能になりました。私たちの研究グループではネオン(Ne)原子を標的にした1光子過程と2光子過程のEWS遅延時間の計測を試みました。FERMIで利用可能になった完全可干渉な2 色(基本波と倍波)のFEL パルスを使えば、それぞれのFEL パルスによりイオン化された電子(光電子)は干渉し合うため、光の位相差で光電子の角度分布に変化が生じます。この角度分布の変化には、異なるイオン化経路による光電子の位相差の情報が含まれています。さらに、この位相差と、光電子の運動エネルギーとの関係を調べることでEWS 遅延時間が計測できます。「 地震活動に関連した大気中ラドン濃度異常変動の抽出」「 完全可干渉な自由電子レーザーを用いた光イオン化遅延時間計測」岩田 大地先端基礎科学領域博士研究教育院生3年理学研究科地学専攻You Daehyun先端基礎科学領域博士研究教育院生3年理学研究科化学専攻