ブックタイトルクロスオーバーNo.40

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概要

クロスオーバーNo.40

05学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.403D 映画やゲームなどで立体像を見たときに、違和感や不快感を覚えたことはありませんか。人間は右目と左目で見る映像の差異(両眼視差)によって立体感を得ることが一般的に知られていますが、この他にも目のピントがどの位置にあるかによって、見ている物体の距離を認識しています。両眼視差のみを用いた立体表示方式では、再生像が常にディスプレイの位置にあるため、再生像の位置によらず使用者の目のピントはディスプレイの位置に合ったままとなります。このため、立体視の機構に矛盾が生じ、再生像が不自然であると感じたり、眼精疲労を引き起こしたりします。この課題を解決した次世代の立体ディスプレイとして、ホログラフィックディスプレイが注目されています。ホログラフィックディスプレイは物体から出る光の波面を光変調素子と呼ばれる液晶素子を用いて再現することから、目のピントが再生像の位置に合う自然な立体表示が可能です。ホログラフィックディスプレイは、光の干渉や回折といった現象により立体像を再生することから、再生像を観察可能な範囲は光変調素子の画素ピッチに由来する最大回折角に制限されます。実用において最低限必要とされている30°の視域角を実現するためには、光変調素子の画素ピッチを1 μm以下にする必要があります。本研究では、実用的なホログラフィックディスプレイ実現に向け、1 μm ピッチの液晶画素を実現するための検討を行ってきました。1 μm ピッチの液晶画素では、隣接する画素に電界がもれ出すことに加え、液晶の弾性力が隣接する画素に伝播することから、画素ごとの独立した駆動が困難となります。この問題を解決するために、誘電体シールド壁構造という新たな画素構造を提案し、1 次元の画素配列で独立駆動が可能であることを実験的に示しました。現在は、2 次元の画素配列を有する誘電体シールド壁構造の作製における課題に取り組んでいます。私の研究テーマは日常的な問題(例えば、人間関係が上手くいかないなど)の解決を支援するツールの開発です。これまで、解決志向アプローチ(Solution-Focused Approach:以下SFA と略す)という心理的な支援モデルに基づいてワークシート形式の支援ツールを開発してきました(図1)。SFA では個人の問題解決能力を最大限に高める方法を検討し、大きく二つの活動が問題解決に有効であることを示しています。一つは目標を明確にすることです。ここでいう目標とは解決後の生活を意味します。明確な目標がないままだと、どのような対処の仕方が有効・無効・逆効果なのかを知ることが難しくなります。「問題が解決したら生活はどのように変わるだろうか」と解決後の生活状況を具体的に想像することで、問題解決に有効な手段を知ることができるようになります。もう一つは「少しでも上手くいっているとき」を拡大することです。例えば、「問題が深刻な状態を0点、解決した状態を10 点」として問題の深刻さを継時的に測定すると、問題の深刻さが常に0 点であることは非常に稀です。つまり、問題の深刻さにはゆらぎがあり、少しでも解決に近づいているときが必ずあります。このような問題の深刻さが解決に近づいたときに着目して、効果的な対処を発見していきます。これまでの研究から、専門的な知識を持たない人が一人で実施可能なSFA の支援ツールを開発し、問題の解決に対して効果があることを確認してきました。その他に、一人でも実施可能な精神状態のアセスメントツールを開発しました。この研究からは、アルコール依存症などの特定の精神疾患に対しては人間と同等の精度で診断できることが示されています。今後は、自然言語の情報処理を取り入れることで、カウンセラーのような返答が可能なSFAのスマホアプリの開発を検討しています。また、スマホで収集可能な情報から心理状態を分析することで、より正確なアセスメントに繋がると考えています。「 実用的なホログラフィックディスプレイの実現を目指して」「 解決志向アプローチに基づく日常的な問題の解決支援ツールの開発」磯前 慶友デバイス・テクノロジー領域博士研究教育院生3年工学研究科電子工学専攻高木 源人間・社会領域博士研究教育院生3年教育学研究科総合教育科学専攻図1 支援ツールの質問と回答の例