ブックタイトルクロスオーバーNo.38

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概要

クロスオーバーNo.38

03学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.38輻射伝熱は物体表面から放射される電磁波(光)によって熱が輸送される最も基本的な伝熱形態の一種です。他の伝熱形態である伝導・対流伝熱と比較した輻射伝熱特有の性質として、輻射伝熱は熱エネルギー輸送媒体が光であるため、光のスペクトル的あるいは空間的性質に着目した制御が可能であるという点が挙げられます。これにより例えば、太陽光のスペクトル領域(0.3-1.5 μ m)のみ輻射反射率を増強し、赤外領域(1.5-25 μ m)の輻射放射率を増強させる表面処理を施すことで、外部エネルギーを投入することなく動作する効率的な冷却機構を作ることが出来ます。このような機構は現在ビルの冷却や宇宙機の熱マネージメントにも活用されています。私の研究では、これまで報告されていなかった、輻射のスペクトル・空間特性を自在に制御する手法の開発および輻射熱マネージメント技術への応用まで視野に入れた包括的な研究を実施しました。既報では、主に金属や極性結晶材料表面に光の波長ほどの大きさの周期的なナノ・マイクロ構造体を形成することで輻射特性の制御が行われてきましたが、実用上安価に大面積に輻射制御鏡面構造を作製するのが困難でした。本研究の一部では、経済性に優れる高分子材料に着目し、高分子材料が持つ分子振動を利用することで輻射制御を試みました。そこで、高分子薄膜を利用したシンプルな光共振器構造を提案し、実験・数値解析両面から性能を評価したところ、赤外領域の輻射スペクトル形状の制御および輻射放射角度の空間的制御の両面の制御が高分子薄膜の膜厚によって制御可能であることを実証しました。この結果から、大面積作製が容易であり、なおかつスペクトル・空間特性制御が可能な手法を提案することができました。これにより、実用的かつ新基軸の輻射熱マネージメントデバイスへの応用が期待できます。DMF は、日本での消費量が世界で第3 位、PRTR で注目されている有機物です。DMF の毒性が強いので、排水の適正処理が大変重要と考えています。しかし、従来の好気性処理は曝気のため多くの電力を消費し、余剰汚泥もたくさん発生しました。嫌気性処理は曝気が入らないし、汚泥も減量し、低炭素的な処理と考えました。しかし、DMF 嫌気性処理についての報告はまったくありませんので、嫌気性条件での分解が可能かどうかは分からない。そこで、私の研究は省エネルギーとメタン回収を目指して、DMF の嫌気性処理技術を開発しています。具体的に、一番目は、DMF の生物分解の可能性とメカニズムの解明、二番目は、高効率的DMF処理システムの確立です。生物化学的な検討により、DMF の分解経路を推定し、「二段階反応仮説」を提出しました。DMF の分解は、細菌によるDMF から中間生成物までの加水分解反応と古細菌による中間生成物からメタンまでの発酵反応の2 つの部分があります。この仮説を検証するために、「混合反応系」を工夫しました。好気性汚泥と嫌気性汚泥を混合し、嫌気性条件で培養した結果はDMFのメタン発酵処理を世界で初めて実現しました!それから、機能性微生物の構造とその役割を解明しました。DMF 加水分解細菌とメタン生成古細菌の共生系の形成はDMF メタン発酵処理の鍵と考えました。その加水分解細菌は、好気性条件で指数的に増加し、嫌気性条件で生きることもできます。以上の結果を踏まえ、「好気と嫌気を組み合わせた二段階のシステム」を工夫しました。これから、長期的な連続実験を行い、リアクターの処理能力、安定性を把握することで、DMF メタン発酵を高効率に実現することを目指します。「 輻射伝熱のスペクトル・空間的制御」「 DMF 排水の処理とバイオエネルギー生成のための嫌気性MBR システムの開発」津田 慎一郎物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年工学研究科機械機能創成専攻(9月修了)李 ?物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年工学研究科土木工学専攻研究教育院生の研究内容紹介