ブックタイトルクロスオーバーNo.38

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クロスオーバーNo.38

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.3802平成30年度 融合領域研究合同講義予定講義室:学際高等研究教育院 大セミナー室  時間:毎週水曜 13:00 ~ 14:30 ※受講希望者は各研究科教務係へお届けください。No 講義日講時担当者所属等講義題目講義概要1 10月3日?13:00~14:30山谷 知行学際高等研究教育院長講義ガイダンス 「合同講義」開設の由来、「合同講義」の意義及び学際高等研究教育院の理念・使命について解説するとともに、講義の進行について、講義の受け方や感想文の提出など成績評価について解説します。植物の生産を規定する窒素利用代謝の分子機構 イネ科作物であるイネ・コムギ・トウモロコシは、世界人口の70-80%を支えている。光合成で得たエネルギーと糖を用いて、植物は成育や生産の全てを無機態元素に依存する独立栄養を営む。17の必須元素の中で、窒素は植物の成育・生産を最も規定する。真核多細胞生物である植物は、器官や組織を構成している個々の細胞で代謝を分担している。本講義では、イネの各器官や組織における窒素代謝の分子機構の理解を深める。特に、逆遺伝学を駆使した遺伝子破壊変異体を活用し、窒素代謝の分子実態を紹介する。同時に、システムズバイオロジーによる代謝間のバランスの重要性や代謝産物のネットワークについて理解を深める。2 10月10日?13:00~14:30滝澤 博胤理事・副学長(教育・学生支援)マイクロ波エネルギーを利用した新しい材料プロセッシング マイクロ波応用というと、放送、レーダー、無線通信などを思い浮かべるであろうが、「マイクロ波加熱」に示されるように、物質を加熱する手段としての利用も重要である。マイクロ波はGHz帯の電磁波であることから、放射線や紫外・可視光などの光よりも長い波長をもち、フォトン・エネルギーとしては10-5 eV程度で極めて小さい。マイクロ波加熱は振動電磁場と物質中の荷電粒子、スピン、電気双極子モーメントとの相互作用によって起こり、電子レンジによる食品加熱に代表される極性分子の誘電加熱のみならず、多くの固体物質も自己発熱させることができる。 マイクロ波加熱は熱伝導に依らない自己発熱現象であることから、内部加熱、急速加熱という特徴を有し、省エネルギーの熱源代替技術として研究されているが、むしろ、自己発熱を駆動力とすることによって、「新しい化学反応の場」が形成されることに注目したい。本講義では、マイクロ波エネルギー応用が切り拓く革新的な非平衡材料プロセッシングに焦点をあてる。3 10月17日?13:00~14:30佐藤 弘夫文学研究科教授歓談する死者たち―変容する死後世界のイメージ 人はみな死すべき運命を背負っている。人の生は、無数の他者の死の上に成り立っている。しかし、現代の日本社会では、死を語ることは一貫してタブー視されてきた。3・11の大震災を経て、超高齢化社会と大量死の時代を迎えつつあるいま、いかにして死を迎えるかという問題が避けることのできない課題として目の前に立ちはだかっている。この講義では、日本列島における死生観の歴史を辿りながら、先人たちが死をどのように受入れ、死者といかなる関係を築き上げてきたかを概観する。また、前近代と比較しながら近現代の死生観の特殊性を指摘するとともに、理系をも含めた、死をめぐる領域横断的研究の可能性を探ってみたい。4 10月24日?13:00~14:30栗原 和枝未来科学技術共同研究センター教授トライボロジー融合研究:分子間力から摩擦力まで 摩擦を研究する分野をトライボロジーと言う。摩擦は動く機材、そして多くは潤滑油なども関わる複雑な現象のため、現象の解明は十分に進んでいない。摩擦や摩耗などの制御によるトライボロジー技術の経済効果は、省エネルギー、機械の信頼性や寿命の向上などから非常に大きく、GDPの2%にも及ぶと推算され、その解明が望まれていた。 最近、ナノ界面科学の進歩により現象解明の可能性が見えてきたこと、また省エネルギーやイノベーションなどの社会的課題からの要請が大きくなったことから、摩擦現象を解明し、新しい技術展開を目指そうという動きが活発になっている。これには、機械、材料、計測、シミュレーションといった広範な融合研究が必要である。 本講義では、先端的なトライボロジーの融合研究について、背景や最近の展開を含め解説する。5 10月31日?13:00~14:30高橋 秀幸生命科学研究科教授宇宙生物科学:植物の成長制御から宇宙居住まで ヒトを含めたすべての生物は、緑色植物の光合成に依存して生きている。その植物は固着性生物として、さまざまな環境ストレスを軽減・回避し、効率的に光合成を行うために、環境変化に応答し、成長を制御するしくみを獲得した。例えば、陸上植物は、重力や水や光を感知して形をつくるとともに、伸長方向を決定し、茎葉や根を生存に有利な環境へと導く。また、光合成そのものが、それらの環境要因の影響を受ける。なかでも、重力の生物影響については、宇宙環境を利用した生物学が可能になり、それによって植物機能を理解し、それを最大限に活用した植物生産システムを構築することが重要になっている。本講義では、植物が重力や水を環境シグナルとして利用し、自らの形や成長方向を制御するしくみと、それを研究するための宇宙実験を概説し、さらに、地球生命を支え、人類の宇宙惑星居住に必要になる生命維持システムについて、近未来の宇宙における植物生産と閉鎖(制御)生態系から考える。6 11月7日?13:00~14:30中沢 正隆電気通信研究機構特任教授光ファイバ通信の現状と将来展望  光ファイバは髪の毛のように細いガラスから出来ているが、その中心にあるコアに光を閉じこめて、大量の情報を高速に長距離伝送している。この講義では光通信システムを構成する光源・変調器・ファイバ・受光器などの各種光デバイス技術を簡単に説明したうえで、今日の多様な光伝送技術について紹介する。さらに、今日のグローバルな情報インフラを支えるフォトニックネットワークの重要性と我々が世界に先駆けて挑戦している革新的光通信技術について講義する。7 11月14日?13:00~14:30佐藤 嘉倫文学研究科教授信頼関係はいかにして成立するのか 私たちは他人を信頼したり他人から信頼されたりして日常生活を送っている。朝起きてバスに乗って大学に来て講義に出席するというありきたりの行動を例にとろう。この場合、バスの運転手が自分の降りる停留所までバスを運転してくれると信頼し、講義を担当する教員が教室に来て講義をしてくれると信頼している。しかしよく考えると、人を信頼することはリスクを伴う行為である。人を信頼してその人が信頼にこたえてくれるならば、現状よりも良いことが起こる。しかし裏切られるならば、現状よりも悪くなる。また信頼関係が成立するためには、自分が他人を信頼するだけでなく、その他人が自分を信頼してくれなければならない。このように人を信頼することや信頼関係が成立することの背景には、かなり複雑な社会的メカニズムが存在している。本講義では、数理モデルやコンピュータ・シミュレーションによってこのメカニズムの解明を行う。8 11月21日?13:00~14:30蔡  安邦多元物質科学研究所教授結晶学におけるパラダイム・シフト?準結晶の発見、構造と性質 液体急冷したAl-Mn合金に五回対称性をもつ新物質が1984年に報告され、その後すぐに「準結晶」と名付けられた。準結晶は、それまでの固体の基本構造が結晶か、アモルファスのいずれかであると考えられてきた固体構造概念を覆す第三の物質として、その発見は高温超伝導体と並んで物質科学における20世紀後半の最大の発見であった。準結晶の発見者であるDan Shechtman(シェヒトマン)博士が2011年のノーベル化学賞に受賞している。しかし、最初の発見から準結晶の実体が明らかにされ、準結晶という新物質概念が世界的に認知されるまで紆余曲折があった。本講では、準結晶発見の経緯、学問に与えるインパクトおよび準結晶構造に秘められる数学の美を分かりやすく説明し、準結晶の発展と全般的な性質を解説する。9 11月28日?13:00~14:30大野 英男総長スピントロニクスを用いた省エネルギー集積回路 電子の電荷とスピンを使うスピントロニクスにより、極めて省エネルギーの集積回路が実現できると期待されています。この省エネルギー集積回路にまつわる材料、物理、素子、回路について俯瞰すると共に、世界のトレンドを決めるダイナミズムとそれがもたらす社会的インパクトについて考えます。10 12月5日?13:00~14:30井上 邦雄ニュートリノ科学研究センター長宇宙・素粒子の謎を解く鍵:ニュートリノ物質を構成する素粒子の一種であるニュートリノは馴染みある電子などの素粒子と比べて桁違いに多く宇宙に存在します。太陽や地球などの天体からも大量に放出されていますが、天体のような大きな物質でも簡単にすり抜けてしまうため身近に感じることは難しい素粒子です。大型の観測装置の進歩によってニュートリノ観測が実現し、ニュートリノの性質の理解が進んだため、ニュートリノの透過性を利用した天体内部の研究が可能になりました。一方、ニュートリノだけが持ちうる特別な性質が、宇宙に反物質が無く物質だけで作られていることを解明すると考えられています。この性質の究明にも、ニュートリノ観測装置の特徴的な環境が利用できます。ニュートリノを利用した天体内部の観測や、宇宙物質優勢の謎への挑戦を紹介します。11 12月12日?13:00~14:30今村 文彦災害科学国際研究所長東日本大震災の被害実態と教訓 ? 災害科学国際研究所の発足と現在の活動 東日本大震災の1年後に東北大学に災害科学国際研究所が発足し,当時の課題を解決するべく文理融合の英知を結集し、得たれた知見をベースに自然災害科学に関する世界最先端の研究を強力に推進する組織を立ち上げた。すでに、2015年国連防災世界会議での活躍、2017年第一回世界防災フォーラムの開催など、その活動は学術を越えて世界社会への貢献を目指している。この組織では、どのような学際連携の取組が組まれ、どのようにその成果を復興支援や今後の防災活動として貢献活動を展開しているのか紹介したい。今回、高度化しシミュレーションで解析されつつある、その大規模地震や津波の実態を見て頂き、なぜあれだけの大災害が生じたのか?その上で、我々は今後に何をすべきなのか考えていただきたい。 後半は、昨年6月に指定国立大学の指定に伴って発足した災害科学世界トップレベル研究拠点の動きを紹介したい。災害対応サイクル理論を適用することで4つの科学分野を融合させ、学内での学際連携を基盤とした「災害科学」の学問研究領域を創成することを目的とする。さらに、環太平洋大学協会(APRU)組織などと始まりつつある国際的な災害科学研究ネットワークを発展させ、国際共同研究の強化や国際学術会議の開催を通じて「災害科学」の体系化を図り、世界をリードする研究拠点を目指している。12 12月19日?13:00~14:30山本 雅之医学系研究科教授東北大学 東北メディカル・メガバンク機構長酸素と医学 酸素は蝋燭の火を燃やすと共に、私たちの体を生きながらえさせる重要な環境因子である。酸素は、私たちの体が効率的にエネルギーの獲得することを保証するが、一方、過剰な酸素は私たちの体を錆びさせていく。近年に至り、ようやく、酸素濃度の変化に応答して、体を守る仕組みの分子基盤が解明されつつある。本講義では、酸化ストレスから体を守るKEAP1-NRF2制御系の脱抑制制御の様子と、低酸素に応答して体を守るエリスロポエチン遺伝子の発現制御の様子を紹介する。学生諸君に「酸素生物学」の興味深い世界を実感して頂くと共に、さらなる論文講読のガイドを提供したい。13 1月9日?13:00~14:30寺崎 哲也薬学研究科教授薬物の生体膜輸送と体内動態予測:脳関門を中心に 薬が期待された通りの効果を表すには、標的部位へ効率良く運ばれる必要があることから、その体内動態(運命)を予測することは非常に重要である。消化管吸収、肝臓内代謝、胆汁分泌、腎排泄、脳移行性など個々の臓器によって薬の運命は異なり、これらを理解するには細胞膜透過性、生体成分との結合性、酵素による代謝反応などの素過程を理解することが大切である。 本講義では、薬の生体内運命の各素過程を組み込んだ数学モデルを用いた体内動態予測理論について概説すると共に、生体膜輸送研究の基礎と応用について概説する。脳組織は、血液脳関門、血液脳脊髄液関門、血液くも膜関門、血液脊髄関門があり、血液と脳組織の間の内因性物質や薬物の輸送を制御している。したがって、脳は薬物分布が最も予測困難な組織である。これらの関門における生体膜輸送機構を中心に、半定量的非標的プロテオミクスと定量的標的プロテオミクスを用いた最先端の研究動向について概説する。14 1月16日?13:00~14:30早瀬 敏幸学際科学フロンティア研究所長実世界の流れを再現する-コンピュータシミュレーションの新たな展開- 流れは、呼吸や血流などの生命維持から、室内環境、輸送機器や大規模プラントなどの人工物、大気や海流などの地球環境にわたる幅広い分野の問題に関わっている。特に医療診断や流れの制御、気象予測など、実世界の流れを正確かつ詳細に知ることが必要な問題は多い。計測はそのための最も直接的な方法であるが、時間的・空間的に広がりをもつ流れの状態を完全に計測することは困難である。一方でコンピュータシミュレーションによれば流れ場の詳細な情報が得られるが、正確な初期値や境界条件は一般に未知であり、実世界の流れを正確に再現することは難しい。このように計測やシミュレーション単独では解決が困難な問題を、両手法の融合により解決しようとする研究が近年様々な分野で活発に行われている。本講義では、計測と融合した新たなシミュレーション手法について説明し、種々の流れ解析への適用例について述べる。15 1月23日?13:00~14:30大隅 典子医学系研究科教授副学長(広報・共同参画)「個性」を科学するというチャレンジ 人間の「個性」は、身長、体重、髪の毛や目の色のような身体的なものだけではなく、認知的能力やパーソナリティなど、脳神経系の機能に大きく関係する。心理学では、こうした認知的能力やパーソナリティの個人差について、知覚現象などに代表されるヒトとしての心的機能の共通性と合わせて、個別性(「個性」)を法則的に理解することを試みてきた。しかし、ヒトの心的(認知的)機能の共通性については、関連する神経科学的研究との連携によってかなりのことが解明されてきたにもかかわらず、心的機能の個人差、すなわち「個性」の問題については現象の記述的説明レベルにとどまっており、その神経生物学的基盤については未だ十分には明らかにされていない。近年の主に動物を対象にした進化心理学的アプローチによる「個体差」の研究では、行動面の「個性」は単にランダムなばらつきではなく、環境への適応の一つとして機能していることが示唆されている。したがって、人間の「個性」も単なる「個人差」ではなく、進化の過程で形成された形質の表れと考えることにより、何らかの法則性がその背後に存在することが想定できる。一方で、規則性に基づいた多様性は、個人ごとに育まれて、多岐にわたる発達の道筋を生みだすと考えられる。いわゆる「定型発達」と「非定型発達」は、このような道筋の幅のなかで捉え直すことが重要であり、乳幼児期から青年期に発達した個性は、種に普遍的な特徴とともに次世代へ継承される部分があると予想する。 本講義では、2016年より立ち上げた新学術領域「多様な<個性>を創発する脳システムの統合的理解」という学際的なグループ研究についても紹介しつつ、平均値で語れない科学へのチャレンジについて聴講生とともにディスカッションしたい。 【参考サイト】  新学術領域HP:http://www.koseisouhatsu.jp/  大隅研HP:http://www.dev-neurobio.med.tohoku.ac.jp/