ブックタイトルクロスオーバーNo.36

ページ
7/8

このページは クロスオーバーNo.36 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

クロスオーバーNo.36

07学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.36全領域合同研究交流会( 以下、交流会) は、昨年度をもって創設後丸三年を迎えました。学際科学フロンティア研究所の若手研究者の先生方と学際高等研究教育院生(以下、研究教育院生)が、研究紹介と議論を通じた多分野の研究者との交流によって異分野融合研究の端緒を得ることが、本交流会の目的です。本年度は交流会の歴史の転換点とも言うべき、研究教育院生主体の交流会運営がスタート致しました。本稿では、学生による運営が始められた経緯と平成29 年度の運営体制をご紹介し、更に現在の問題点と交流会の今後について、私見を交えつつご報告致します。① 研究教育院生による運営開始の経緯本交流会はこれまで、学際科学フロンティア研究所の先生方が主体となって企画・運営をされて参りました。しかしながら昨今、研究教育院生が交流会へ積極的に参加できていない状況が目立っておりました。交流会への参加が半ば惰性に近づき、自身の研究の発展に繋げることが困難になっている点が、この事態の一因として考えられました。そこで、如何に研究教育院生にとって有意義な交流会を創るべきか、研究教育院生自身による検討が必要となりました。② 平成29年度後期の運営体制平成28 年度採用博士研究教育院生を運営学年とし、交流会の運営方針について議論を行いました。その結果、一度の参加によって得られる情報量を増やすことと、分かりやすい発表を徹底して追求することが、研究教育院生の主体的な参加を促すための最重要課題であるという見解が得られました。情報量を増やすための工夫として、 平成28 年度に一度廃止されたポスター発表を復活させ、一回につき2 ? 4 名の口頭発表者と6 ? 10 名のポスター発表者を各月に配置しました。発表内容の偏りによる参加へのハードルを下げるため、各領域基盤の学生をバランス良く割り当てることに配慮しました。また、全ての発表者には、誰にとっても分かりやすい発表を目指して頂きました。背景知識はおろか、眼前に広がる事象の捉え方も異なる相手に対し、自身の研究分野の面白さと意義を伝えられるよう、発表者各自の入念な準備が求められました。以上の方針のもと運営を進めた結果、後期第一回は約60 名、第二回・第三回は30名以上の交流会参加が実現しました。第二回以降は参加者が減少しており、課題が残る状況であることは否定できません。しかしながら、学生運営開始前よりも参加者が増加したことも事実です。研究教育院生による交流会運営は、交流会を研究教育院生にとってより魅力的な場に発展させられたと考えております。③ 現状の問題点と交流会の今後上述の通り、交流会には今なお課題が残っております。当然ながら、研究教育院生の仕事は自身の研究に邁進することです。多忙により心と時間の余裕を失いがちな日々の中、交流会に参加して他分野の知識を得るためには、相応の利益と動機が必要となります。可能な限り利益が得られ、その度に融合研究に対する動機を拡充できる会に成長させることが、今後の交流会に求められています。現在の交流会は、発表者としての利益が大きい会であると考えられます。私自身も口頭発表を行いましたが、端的な発表を創るために知識を掘り下げられたことや、他分野の方々からの質問を契機に研究の新たな可能性を見出せたことは、本交流会での発表ならではの収穫です。しかし、聴衆として参加する場合の利益は未だ不十分であると思われます。昨年末に実施されたアンケートの回答には、「専門分野が離れすぎていて発表に興味を持てない」「融合研究に繋がるとは思えない」といったご意見が散見されました。聴衆として収穫を得られる会を創るには、これらのご意見への真摯な対応が不可欠です。今後、交流会運営は平成29 年度採用の博士研究教育院生に引き継がれます。今年度築かれた基礎が活きれば幸いですが、29 年度生の力による革新に期待しております。今の自身の研究に融合性を持たせることが本交流会の意義ではないと、私は考えております。これまでに私が感じた交流会の意義は、物事の捉え方の多様性を認める心の幅ができること、そして分野は違えど同じ立場で努力する同志の姿を見て自分自身を正せることです。何気なく触れた知識が、未来のある日に自分の助けとなるかもしれません。偶然話した相手が、人生を輝かす仲間になるかもしれません。そんな幸運を期待して参加できる交流会を創ることが可能であると思っております。本交流会から生まれた異分野融合の文化が東北大学全体に、そして日本全体に行き渡り、世界の幸福に貢献できるとしたら、素敵なことではないでしょうか。学際高等研究教育院 博士研究教育院生 全領域運営係生命・環境領域 医学系研究科 松平 泉融合研究の主なコラボレーション活動平成29年度 全領域合同研究交流会