ブックタイトルクロスオーバーNo.36
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クロスオーバーNo.36
05学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.36脳機能や神経変性疾患は、顕微鏡観察技術により確実に理解されてきています。例えば、神経伝達物質であるドーパミンは快感や意欲、グルタミン酸は記憶や学習などの脳機能に密接に関連しています。また、神経変性疾患の一つであるパーキンソン病を発症した脳では、神経伝達物質であるドーパミンの放出量の減少がみられます。しかしながら、顕微鏡観察技術は、活動中の神経組織から放出される複数の神経伝達物質を同時に検出することが困難でした。多項目で神経伝達物質を解析する手法を開発することで、これまで得られなかった脳機能や神経変性疾患の解明が期待されます。化学反応に伴う電子のやりとりを検出可能な電気化学デバイスは、化学物質濃度の変化を迅速に定量分析が可能です。私は、集積回路(LSI)と電気化学デバイスを融合した新規電気化学デバイスの開発を行っています。このLSI 技術はデジタルカメラの光センサ部位に広く応用されていますが、本研究では光センサの代わりに、電気化学センサを用いることで、化学物質濃度の変化を電気化学的にイメージングすることが可能です。これまで、この新規電気化学デバイスを用いて、神経様細胞の細胞凝集塊から放出される神経伝達物質の定量的なイメージングに成功しています。さらに、この電極を改良し、電極表面に特定の神経伝達物質に特異的に応答する酵素-高分子膜を塗布することにより、複数の神経伝達物質を同時にイメージングすることに成功しました。これらのイメージング技術は、細胞組織の様々な活性の定量的評価に限らず、複数の神経伝達物質の関係を明らかにすることが可能となります。現在、この電気化学デバイスをさらに発展させ、神経伝達物質の選択的かつシグナル増幅可能なデバイスの開発を行っています。また、電気化学(指導教員)と高分子材料化学(副指導教員)の分野を融合し、高活性燃料電池材料に資する新規高分子触媒材料の開発も行なっています。私は、物理法則において“ 対称性”がどこまで保たれているか、ということを検証する研究を行っています。身近な対称性でいうと、鏡に映った自分と実際の自分は鏡映対称な関係にあります。一般的には左右を入れ替えても物理法則は変わりません。このような場合は対称性が“保存する”といいます。一方で、物理現象の中では左右を入れ替えると今まで起きていた現象が起きなくなるものもあります。このような場合は対称性が“ 破れる”といいます。私はこの対称性の中でも特に、時間反転対称性に着目した研究を行っています。時間反転とは映像を逆再生するような操作に相当します。時間反転対称性の破れはそれ自体が既に興味深い現象ですが、宇宙の成り立ちを理解する上でも非常に重要となる現象です。私はこの時間反転対称性の破れを、原子を用いて探索することを目指しています(図1)。従来このような研究は原子ビームを用いて行われてきました。近年のレーザー技術の進歩により、原子の速度をレーザー光で操作し、減速した上で真空中に捕獲することが可能になりました。真空中に捕獲することで、長い時間測定に用いることができ、また原子が動く場合に比べて環境に起因する測定の誤差を小さくすることができます。実験では、対称性の破れの影響を受けやすいフランシウム(Fr)原子と、影響を受けにくいルビジウム(Rb)原子を同時に真空中に捕獲・測定し、比較を行うことで高い精度で探索する計画ですが、Fr 原子は寿命が3 分と短い為に使用できる時間が限定されており、測定系の開発には用いることができません。そこで私は、Fr 原子の代わりにRb 原子の2 つの同位体を捕獲することでこの状況を模擬し、研究を行うこととしました。現在までに、Rb 原子の2 つの同位体を簡易的な実験系でも効率的に真空中に捕獲することに成功しました。今後は捕獲した原子を用いて高精度測定系の開発を進めていくことで、対称性の破れの探索を進めていく予定です。「 神経活動の多項目同時計測に向けた機能性高分子修飾電極の創成」「原子で探る対称性の破れ」阿部 博弥デバイス・テクノロジー領域博士研究教育院生3年環境科学研究科先端環境学専攻内山 愛子先端基礎科学領域博士研究教育院生3年理学研究科 物理学専攻図1.原子に磁場と電場を印加する場合、時間反転するとコイルに流れる電流の向きが逆になり磁場の向きが逆転する一方、電場の向きは変わらない。この2つの系を比較することで時間反転対称性の破れを探索する。