ブックタイトルクロスオーバーNo.36
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クロスオーバーNo.36
03学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.36“超伝導”は低温で電気抵抗がゼロになる現象であり、物理学における最も魅力的な現象の一つです。超伝導は電気抵抗を生じないことから、高効率の送電ケーブルや強力な磁場を発生させる電磁石への応用が既に始まっており、2027 年に開業予定であるリニア新幹線にも使われる予定です。しかしながら、これらに利用されている超伝導材料は、非常に低温まで冷やさないと超伝導を示さないため、高価な液体ヘリウムなどを用いて冷却しなければ使えません。そのため、より高い超伝導転移温度Tc を持つ物質の発見が望まれています。そこで私は、主に材料化学の分野で用いられるインターカレーション反応に着目し、新規高温超伝導体の創製を目指した探索的研究を行っています。インターカレーションとは、層状構造を持つホスト物質の“すきま”に種々の原子や分子、イオンなどのゲスト物質を挿入することを意味します。インターカレーションの最大の特徴は、? ホスト物質の二次元構造を壊すことなく、結晶構造や電子状態を変化させることが可能であり、? 挿入するゲスト物質の種類によって多種多様な物性を誘起できることです。最近、本研究グループでは、鉄系超伝導体FeSe の層間にアルカリ金属と有機分子を同時に挿入する、“コインターカレーション”により、Tc が8K から45K 程度まで飛躍的に上昇することを発見しました。このTc の増加は、アルカリ金属によるキャリアドーピングと有機分子による層間距離の増大が電子構造を劇的に変化させたことに起因していると推測しています。また、同様の手法を用いて、遷移金属ダイカルコゲナイドのTiSe2やMoSe2の超伝導化( Tc=2 ? 6K)にも成功しました。今後は、インターカレーション化合物の超伝導特性と結晶構造および電子状態の相関を明らかにし、より高いTcを持つ超伝導体( 究極的には室温超伝導体) を探索する指針を得たいと考えています。ヒトを含む一部の動物は、特定の相手に対してのみ親和や友情、愛着、共感的な行動を示し社会的なつながりを作って生活しています。ヒトではこのような社会的なつながりを形成・維持できないことで健全な社会生活を送ることが困難になることが重大な問題とされ、精神疾患という病気として捉えられています。しかし、有効な治療薬や改善方法は確立されていません。治療薬の開発には、社会的な行動を制御する脳や神経細胞の基礎的なメカニズムの解明が必須であり、動物モデルを用いた研究が盛んに行われています。私は、平原ハタネズミというげっ歯類を用いて社会行動研究を行っています。平原ハタネズミは一匹ずつのオスとメスが半永久的なつがいを形成し、両親が子育てを行うことや、つがいや親和性の高い個体に対してのみ共感的な行動を示すといった特徴的な行動から、愛着や親和、愛情、共感的な行動の動物モデルとして注目されています。この様な行動が脳によって制御される機構を研究することで、平原ハタネズミの社会的な行動を特徴付けるメカニズムを解明し、精神疾患研究へと応用することを目指しています。具体的な研究手法としては、平原ハタネズミの遺伝子を、近年急速な発展を遂げているゲノム編集技術を用いて破壊し、遺伝子破壊時の行動を観察することで遺伝子と行動との関連性を探索しています。実際に特定の遺伝子を破壊した平原ハタネズミは、異常な行動を示すという結果が得られており、遺伝子と行動の関連を解明するための有用な動物モデルの作成に成功しました。今後の研究では、複数種類の遺伝子組換え平原ハタネズミを用いて様々な行動解析を行うことで、特定の遺伝子が支配する脳や行動に関する基礎的なメカニズムが明らかにしていきたいと考えています。「 金属と有機分子のコインターカレーションによる新規超伝導体の創製」「 一夫一妻性行動を示す平原ハタネズミを用いた社会行動研究」佐藤 和輝物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年工学研究科 応用物理学専攻堀江 謙吾生命・環境領域博士研究教育院生3年農学研究科 応用生命科学専攻研究教育院生の研究紹介図1. FeSeへのリチウムとエチレンジアミンのコインターカレーション