ブックタイトルクロスオーバーNo.35

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概要

クロスオーバーNo.35

05学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.35「世界を変えるアイデアを3 分間で発表する」このコンセプトで行なわれる全世界スピーチコンテスト「 Fallig WallsL a b F i n a l B e r l i n2017」が11/8 ドイツベルリンにて開催され、日本予選「FallingWalls Lab Sendai」の優勝者として参加しました。かつてベルリンの壁が最初に壊され始めた場所と言われているブランデンブルグ門の前にあるAkademire derkunste にて行なわれ、世界中(予選は22 カ国で開催)の予選勝者100 名が一同に集って各々の研究内容を発表しました。私は「Breaking the Wall of difficulty in Cancer Therapy」というタイトルで発表を行いました。がんは今や日本人の2 人に1 人が罹患し、3 人に1人が死亡する疾患です。全世界においても死亡者数が上位4位であり、効果的治療の実現や予防法確立は全人類に関わる喫緊の課題と言えるでしょう。さらに、進行が速く抗がん剤に耐性を持つ悪性化がんの治療は困難を極めます。これらは再発や抗がん剤投与を繰り返したがんで高頻度に見られます。治療としては抗癌剤の投与量や、放射線の照射量を増やすしか治療方法がありません。そこで、「悪性化がんのみで活性化している因子を標的として阻害すれば、悪性化をキャンセルでき、使えなくなった抗がん剤で再び治療できる(英語では、cancer chemo-sensitizing と呼ばれます)のではないか」というコンセプトでプレゼンをしました。具体的には、悪性化に関わるタンパク質Nrf2 に着目し、その阻害剤Halofuginone の発見と効果検証結果を発表しました。Halofuginone は抗マラリア薬としてすでに用いられているので、安全性も十分。今後、がん治療に向けての利用が大きく期待されます。さて、ここまでであれば普段の学会と変わりありません。特徴的かつ重要なのは、「3 分」という圧倒的な時間の短さと、「他分野の研究者への伝わりやすさ」です。プレゼンター(Finalist と呼ばれます)達の分野は生物学、医学、ロボット工学、エネルギー化学、教育学、心理学など、非常に多岐に渡ります。専門の異なる研究者に、いかに強いインパクトをわかりやすい説明で与えることができるか。今までにないスライドの作成能力が問われました。今回のスライド作成に際し、東北大学知のフォーラム様にはトレーニングセッションを始めとして大変お世話になり、感謝いたします。さらに、プレゼン大会以外のことにも是非触れたいと思います。発表前日、Finalst が一同に会し、互いに自己紹介やプレゼンの内容を一言で紹介し合いました。会話のなんと積極的なこと。食事やCoffee Break の時も、知的好奇心でいっぱいのFinalist 達は「May I join?」と言いながら、グイグイと会話の輪に入ってきます。衝撃でした。また大学院の仕組みや互いの文化について積極的な議論が行われるところも、文化の多様性を感じた瞬間でした。容赦無く「日本人はプレゼンは上手なのに質疑応答はできないよね」と言われて悔しい気持ちになったり。さらに海外では、博士課程に入るための試験が厳しく大学院浪人がいる一方、晴れて試験をパスして博士課程で研究に勤しむほとんどの学生は誇りを持ちsalaly をもらいながら日々過ごしているそうです。日本では学振や学際高等のシステムを利用しつつも、学費を払っているよ、と話すと「では学生として学費を払っている君達は、何を買っているんだい」と訊ねられ、衝撃を受けて何も答えられませんでした。みなさんは日々何を得ているでしょうか。毎日の研究生活を漫然と過ごすのではなく、研究成果を出しつつも貪欲に、積極的に学びに行く姿勢を忘れてはならないと大変強く感じた瞬間でした。優勝したのは、ウィーン大学の助教Agnes Reiner さん。彼女もがん研究者なのですが、overian cancer diagnosis について新規がんマーカーであるMMP9 及びCD51 を見つけただけでなく、それを共鳴プラズモン法の機器に応用して、血液からの診断法確立まで実現した内容でした。優勝も納得の分かりやすさと、分子生物学と光磁気工学の融合研究でした。表彰式の後にはがん研究をしているFinalist 皆でAgnes さんの優勝をお祝いしました。また、将来国際学会でまた会えるように、お互いがん研究を続けようと約束しました。以前オートファジー研究の第一人者である水島昇先生が「研究者は世界中に知り合いが出来ることも大きな魅力ですよ」とおっしゃっておられたのを思い出しました。当たり前ですが「研究は世界中で行われているのだ」と改めて感じました。なお、このFalling Walls Lab は若手研究者のプレゼン大会でしたが、翌日11 月9 日にはFalling Walls Conferenceに参加し、世界各地から招待された一流研究者の講演を聴講する機会に恵まれました。材料科学から国際政治学まで幅広い研究の第一人者の発表に触れ、脳が騒ぎ出す心地よさと興奮に会場が包まれていました。学際高等研究教育院は、融合研究の実践を設立の基本軸としています。私は今回Fallig Walls Lab Final Berlin 2017に参加し、入賞はなりませんでしたが、自分の中にあった壁がいくつも壊れた確信があります。今は研究に対して高いモチベーションでいっぱいです。また、融合研究の重要性や必要性も強く感じています。融合研究は、思い切って他分野の研究者と交流してみたときに、ふいにその片鱗を見せてくれるように思います。今後も開催されるFalling Walls LabSendai、世界にあるさまざまな壁を壊すこの大会で、みなさんも自分の中の壁を壊してみてはいかがですか。研究教育院生の活躍「「壁」が壊れたその先に」林 真貴子生命・環境領域博士研究教育院生2年医学系研究科 医科学専攻★ 34号で掲載したFalling Walls Lab Sendai2017 優勝者の研究教育院生、林真貴子さんに本選へ出場した感想・経験をお聞きしました。 (写真中央が林さん)Akademire der kunste(ベルリン芸術アカデミー)から見えるbrandenburgtor(ブランデンブルク門)