ブックタイトルクロスオーバーNo.35
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クロスオーバーNo.35
Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.3502自然状況に左右される再生可能エネルギー由来電力は、創電と蓄電を組み合わせたトータルでの電力供給システムが必要不可欠です。リチウムイオン電池に代表される二次電池は短期間の電力貯蔵に優れる一方で、自然放電により長期間の電力貯蔵には適していません。そのため、電気を水素に一時的に変換することによって、長期間貯蔵されるのが理想とされます。一般的に、電気エネルギーからの水素製造技術として、水の電気分解法が用いられます。水の電気分解では陰極から水素が発生しますが、使用される電極の種類によって消費電力が異なります。現在、最も消費電力が小さいのは、プラチナを電極材料として用いた場合ですが、高価である事から代替材料の開発が期待されています。そこで本研究では、プラチナ代替材料として高い水素発生能が期待され、かつ豊富な元素から構成されるMo( S,Se)2 の合成を、超臨界流体反応場で行いました。超臨界流体は、液体と気体の中間の物性を持つため、溶解性と拡散性の双方が保持されることが特徴です。一般的なMo( S,Se)2 の合成には、原料として毒性が高く取り扱いが難しい、気体状の硫化水素やセレン化水素が用いられます。一方で、本研究では超臨界流体の溶解性を利用することで、低毒性で取り扱いの容易い固体状の硫黄・セレンの単体を用いることに成功しました。結果として、極めて簡易な原料からMo( S,Se)2 の短時間合成に成功、また、高密度の溶媒条件で合成を行ったところ、高い水素発生能が期待されるフラワー状構造の作製に成功しました(図)。さらに、水素発生能を計測したところ既報のチャンピオンデータと同等の値が確認されました。真の持続可能なエネルギーシステムの構築のためには、環境に優しい手法で、環境に優しい材料を合成し、それをエネルギー変換デバイスに用いることが重要です。本合成手法は、金属硫化・セレン化物全般の合成にも適用可能であることから、他の材料への展開も期待されます。我々の体は、血液中の白血球により様々な病原体から守られています。しかし、血液脳関門があるため、脳に白血球が侵入することは困難とされています。そこで、脳では白血球の代わりに、ミクログリアという細胞が免疫を担っています。正常な脳では、ミクログリアは、樹状の突起を動かしながら脳の異常を監視しており、組織が傷害されると活性化状態へとその形態を変化させます。活性化したミクログリアは、多種多様なサイトカインを分泌しながら、傷害部位へ移動(遊走能)し、組織のデブリや病原体を貪食し除去する(貪食能)ことにより、脳組織の修復に寄与しています。しかし、ミクログリアは諸刃の剣と呼ばれるように、その活性化状態が慢性化することでニューロンが傷害され、うつ病やアルツハイマー病といった神経疾患の惹起をもたらすという報告がされております。よって、ミクログリアの異常活性化を鎮静化するような機能抑制因子の同定が、様々な神経疾患の治療につながることが期待されています。我々の研究室では、神経伝達物質として機能する“脳内ヒスタミン”に焦点を当て研究を行っています。私は、末梢で免疫応答に関与するヒスタミンは、脳内の免疫細胞であるミクログリアにも作用するのではないかと考え、ヒスタミンとミクログリアの関連についての研究に着手しました。その成果として、ヒスタミンが、ヒスタミン受容体を介してミクログリア機能を制御することを、培養細胞を用いた系により明らかにすることができました。この発展として、現在、ヒスタミン受容体を介したミクログリア機能制御が、神経疾患の病態改善につながるかを検討し、成果を出しております。まず、生体内において、ヒスタミン受容体がミクログリアの機能制御に重要であるかを検討したところ、ヒスタミン受容体の阻害がサイトカイン産生能、遊走能、貪食能を抑制することを明らかにしました。また、神経疾患の病態モデルの一つとして、うつ病モデルマウスを用いた検討を行ったところ、ヒスタミン受容体阻害剤投与が、異常に活性化したミクログリアを鎮静化し、マウスのうつ症状を改善させることも明らかにしました。今後は、アルツハイマー病などの他の神経疾患において、ヒスタミン受容体阻害剤の治療効果を検討するとともに、その詳細な作用機序を解明しようと考えております。「超臨界流体を用いた水素発生用電極材料の環境調和型合成」「 薬理学と分子イメージングを用いたミクログリア研究」中安 祐太物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年環境科学研究科 先端環境創成学専攻飯田 智光生命・環境領域博士研究教育院生3年医学系研究科 医科学専攻研究教育院生の研究内容紹介