ブックタイトルクロスオーバーNo.34

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概要

クロスオーバーNo.34

05学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.34「世界未到、ロケット燃焼に対する2 次元瞬時レーザー診断法を如何にして実現するか」これが私の研究における挑戦です。今日のロケットを基軸とする産業の動向として、従来の使い切り方式ではなく、再使用型ロケットや民間宇宙輸送ビジネス等を見据え、より安全で低コストのロケット研究開発が行われています。学術研究においても、最高100 気圧3000℃を超えるような極限環境におけるロケット燃焼現象は、常圧下で構築された理論や手法の多くが適用できない、極めて興味深い研究対象となります。近年では計算機能力の飛躍的向上により、数値シミュレーションを用いた複雑なロケット燃焼現象の評価例が多く挙げられています。しかし、その数値シミュレーション結果を検証するための実験データは、その実験の困難さや、計測技術が未確立であること等の理由により欠乏しています。そこで高精度で広範囲を計測することができる、ロケット燃焼に対する2 次元瞬時レーザー計測法を実現することを本研究の目的としています。本研究では燃焼計測手法として、火炎中に含まれるOHラジカルの2 次元分布をナノ秒オーダーで取得し、瞬時の火炎断面構造を可視化するOH-PLIF(OH- 平面レーザー誘起蛍光)を選択しています。しかしロケット燃焼計測に適用する場合、火炎が放つ高強度火炎発光が信号の蛍光と重なり、計測品質が著しく低下します。本研究では、計測対象の「燃焼工学」分野と計測原理の「分光学」の融合的観点から、信号の蛍光とノイズの火炎発光を効果的に分離するレーザー励起受光手法を新たに考案し、世界未到70 気圧水素 (H2) / 酸素 (O2) ロケット燃焼の2 次元瞬時火炎構造の計測およびその解明に挑戦しています。私たちが日常的に感じられる物体の運動は、古典力学で十分理解することができます。実は、古典力学には2 つの限界があることが知られています。一つはミクロの世界での原子や電子の運動に適用できないこと、もう一つは宇宙の発展といった時間と空間および重力については近似的にしか使えないことがあります。これらの問題についてそれぞれ量子力学と一般相対性理論が提唱され、理論・実験の両面で成功した理論となっています。では、時間と空間および重力はミクロの世界での性質はどのようになっているのでしょうか。この問題は現在でも完全には理解されておらず、量子力学的な重力理論の定式化が必要と考えられています。この課題を解決することで、宇宙の始まりはどうなっていたのか、なぜこの世界は現在の姿になったのか、といった根本的な疑問について物理学から答えが出せると期待されています。私の所属する研究室では、理論的な側面から量子力学的な重力の理論の定式化に取り組んでおり、その定式化として主に弦理論を考えています。古典力学や量子力学では、主に粒子の運動を取り扱っていました。これに対し弦理論ではひもの運動を考えます。粒子と比べると、ひもはそれ自体が振動できるので、粒子よりも様々な現象を引き起こします。特に私が注目している点として理論の階層性(図1)があります。まず弦理論に含まれる膜(図B)について、それが複数枚あった時お互いどのように相互作用をしているかを幾何学的なアプローチから研究を行いました[ 1]。また、ひもが運動する空間(図C)について、ひもの性質を反映するような補正を重力理論に加えることができました[ 2]。これらのひもについての性質を明らかにすることから、時間と空間および重力についての根本的な問題に取り組んでいます。[1] U. Carow-Watamura, M. A. Heller, N. Ikeda, Y. Kaneko, S. Watamura,JHEP1607 (2016) 125.[2] Y. Kaneko, H. Muraki, S. Watamura, Class. Quant. Grav. 34 (2017) no.11,115002.「超高圧ロケット燃焼に対する2次元瞬時レーザー分光計測手法の開発」「弦理論と幾何学」竹内 清剛先端基礎科学領域博士研究教育院生3年工学研究科 航空宇宙工学専攻金子 幸雄先端基礎科学領域博士研究教育院生3年理学研究科 物理学専攻図1. 弦理論は、 A)ひもの物理、B)ひもが張り付く膜の物理、C)ひもが運動する空間の物理、といった階層構造を持っています。弦理論ではC)のように私たちの住んでいる広がった3次元空間(青色)と、小さく丸め込まれた空間(オレンジ)のようになっていると考えられています。オレンジの部分にはひもが巻きつくことで、点粒子では考えられない様々な現象が起こることがわかっています。