ブックタイトルクロスオーバーNo.34

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概要

クロスオーバーNo.34

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.3404情報化社会の深化が進み、ネットワーク上を流れる情報の価値が高まっています。それに伴って、秘匿通信や認証、電子署名などに基づく安全な情報処理技術が求められており、暗号技術がその基盤として広く用いられています。暗号アルゴリズムの数学的な安全性は世界中の機関により十分に評価されています。また、暗号処理は計算量が多いため、ハードウェア(大規模な集積回路)でしばしば実現されます。一方で、近年、暗号アルゴリズムを実装したハードウェアの物理的なアクセスによる攻撃(物理攻撃)に対する脆弱性が指摘されています。代表的な物理攻撃として、暗号演算実行中のハードウェアから生じる消費電力や漏えい電磁波などの副次的な情報(サイドチャネル情報)を観測・解析して秘密情報を抽出するサイドチャネル攻撃があげられます。物理攻撃により市販品から秘密情報を抽出した例も報告されており、物理攻撃に対して安全で、かつ高性能な暗号処理ハードウェアを設計することは情報セキュリティ分野の大きな課題の一つとなっています。私が所属する研究グループでは暗号処理がガロア体と呼ばれる特殊な数体系上の演算で実現されることに着目し、数式に基づく暗号処理ハードウェアの高水準設計手法を開発しています。従来の設計手法は暗号演算に対応しておらず、難解な論理式からハードウェアを手設計する必要がありましたが、開発した手法では同ハードウェアをより直感的な数式で設計することができます。また、これまで膨大な時間を要していた設計後の機能検証時間も100 分の1 以下におさえることができます。これまで私は本手法を用いて、物理攻撃に対して安全なガロア体算術演算ハードウェアの自動合成システムの開発やガロア体算術の最適化に基づく高効率な暗号処理ハードウェアの設計などを行ってきました。現在の暗号アルゴリズムの多くはガロア体上の数式で記述可能であり、また、物理攻撃に対する対策も数学的に定式化され得ることから、本研究により、安全かつ高性能な暗号処理ハードウェアの設計技術を確立して、安全な情報化社会の実現に少しでも貢献したいと考えています。近年の研究により、「人々のつながり」は健康に様々な影響を与えることが明らかになってきています。例えば、近所の人々との助け合いは健康に良い影響を与えます。逆に、強すぎるつながりは健康に悪い影響を与えることも明らかになっています。人々のつながりと健康の関連は状況によって異なると言われていますが、研究はまだ多くありません。本研究は日本の農村に注目しました。人を見たら泥棒と思え、という諺に象徴されるように、日本の農村には強いつながりがあります。強いつながりで結ばれている農村部では、精神的なつながりとは関係なく、既に近所の人々と助け合いをしているため、よい健康状態を維持できている可能性があります。私の研究では、人々のつながりの指標の一つである「信頼」と健康の関連が住んでいる地域の都市度によって変化するのか検討しました。日本全国の65 歳以上の高齢者を対象とし、13,657 名を約3 年間追跡調査しました。この調査では、2 つの「信頼」を測定しました。一つ目は、他者一般への信頼感です。二つ目は、地域の人々への信頼感を測定しました。2 つの信頼の質問に対して「信頼できる」と答えた者の割合は、他者一般への信頼では農村部で22.0%、都市部では20.1% でした。地域の人々への信頼は、農村部で72.2%、都市部では78.4% でした。居住地域が都市であれ、農村であれ、2 つの信頼感の割合はほぼ同じでした。しかし、2 つの信頼感と健康の関連を検討したところ、都市部では信頼感が高い人ほど健康であったのに対して、農村部では地域の人々の信頼は健康と関連していないことが明らかになりました。( 表1参照)。人々のつながりは、常に健康に良い影響を与えるわけではないことを示すことができました。今後も、健康に影響を与える要因を明らかにしていきたいと考えています。「高度情報化社会に求められる暗号ハードウェア設計技術」「信頼と健康の関連は居住地域の都市度によって変化するのか」上野 嶺デバイス・テクノロジー領域博士研究教育院生3年情報科学研究科 情報基礎科学専攻佐藤 遊洋人間・社会領域博士研究教育院生3年歯学研究科 歯科学専攻