ブックタイトルクロスオーバーNo.34

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概要

クロスオーバーNo.34

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.3402強磁性や強誘電性、強弾性といった秩序を複数、かつ同時に有する物質をマルチフェロイック材料と呼びますが、とくに磁性と強誘電性を兼備するマルチフェロイック材料は電気磁気効果という現象を発現するために注目を集めています。電気磁気効果とは磁石の方向が電場によって変化したり、電気分極が磁場によって変化したりする現象のことを指します。この現象を応用すれば電場による磁気メモリの書き込みや、磁場を直接電気信号に変換して検出する磁場センサが実現できると考えられています。こういった応用が実現できれば、強誘電体(すなわち絶縁体)に殆ど電流が流れないこと、磁場に対する電気信号の生成に外部の電源を必要としないことから低消費電力なデバイスを創製できると考えられ、デバイスの省エネルギー化が期待できます。多くのマルチフェロイック材料の磁性、あるいは強誘電性は室温以下で消失してしまいますが、本研究で用いるビスマスフェライト(BiFeO3) は370℃以下でマルチフェロイック性を示すことが知られており、応用に適した材料です。本研究ではR.F. スパッタ法を用いて高品質な薄膜試料の作製を行っています。スパッタ法は真空チャンバーにスパッタガスを導入し、プラズマ化させたスパッタガスで母材をたたき出すことで基板に薄膜を作製する方法です。スパッタガスにアルゴンと酸素の混合ガスを用い、酸素分圧を変化させることで薄膜の組成を調整することができ、条件を最適化することで高品質なビスマスフェライト薄膜が得られました。作製した高品質ビスマスフェライト薄膜の結晶構造や電気的、磁気的特性を系統的に調べ、さらに将来の応用に向けて電気磁気効果の観測を行っています。日本は今、急速に高齢化が進んでいます。それに伴う認知症患者数の増加は、もはや世界的な問題に進展しつつあり、適切な診断や治療の開発が喫緊の課題となっています。みなさん認知症と言えば物忘れとイメージされるかもしれません。たしかに物忘れを呈する患者さんは非常に多いのですが、実際に介護の困りごととなっているのは、物忘れ以上に幻覚や妄想をはじめとする精神症状が多いと言われています。精神症状は、患者さんだけでなく、ご家族や介護者さんをとても悩ませます。認知症の中で精神症状をよく呈するのは、なんといってもレビー小体型認知症です。稀な疾患のように思われるかもしれませんが、実際には認知症の中で最も多いアルツハイマー病に次いで頻度の高い変性性認知症と言われており、決して珍しい病気ではありません。レビー小体型認知症は、精神症状の中でも特に「幻視( 実際にはないものが見えてしまう幻覚のこと)」を生じることが多く、この幻視を的確に評価することが認知症の診断やケアに重要とされています。患者さんが幻視を体験しているところを、医療者が目撃するのは非常に稀なため、一般的に幻視の有無は介護者さんからの聴取をもとに評価されます。しかし、もし患者さんが一人暮らしの場合、この方法では介護者さんから病状を聴取することができません。そこで私達の研究室では、幻視とよく似た錯視を幻視の代用尺度として利用し、患者さんから直接的に幻視を評価するための方法( パレイドリア・テスト) を作成しました。これは白黒のノイズ画像の中に、①「顔画像」が挿入された刺激、②「顔画像」が挿入されていない刺激を患者さんに提示し、顔の有無を尋ねるだけの検査です。しかし、レビー小体型認知症の患者さんでは、本来「顔画像」が挿入されていないところに、「顔がある!!」と見間違えてしまうことが多く認められ、このような現象が幻視の評価や他の認知症疾患との鑑別診断に役立つことが分かってきました。現在私はこの現象を利用して、認知症診療に貢献するための研究を進めています。「高品質マルチフェロイックBiFeO3薄膜の作製と電気磁気効果」「認知症の精神症状に関する研究」一ノ瀬 智浩物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年工学研究科 応用物理学専攻渡部 宏幸生命・環境領域博士研究教育院生3年医学系研究科 障害科学専攻研究教育院生の研究内容紹介