ブックタイトルクロスオーバーNo.33

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概要

クロスオーバーNo.33

05学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.33持続的な循環型社会を構築するためには、再生産可能なバイオマスを原料として人々の生活に必要な製品を作り出す技術の開発が必須です。これまでは、バイオマスをバイオエタノールやバイオディーゼルなどの燃料に変換する技術や、バイオプラスチックなどの化成品に変換する技術の開発が盛んに行われてきました。いずれもバイオマス中の特定成分に着目し、それを効率的に変換するための新たな技術を深く掘り下げる研究が中心で、その変換を実現する多くの優れた技術が報告されています。しかし、残念なことに、それらの技術は実際に社会で活用されるには至っていません。変換効率だけを指標として技術開発を行った結果、条件が過酷でエネルギー消費が大きい、廃棄物が多量に生じる、原料が既存産業と競合、多成分混合物であるバイオマスから特定成分のみを取り出す成分分離が困難、得られた製品の品質が不安定で廉価、といった社会実装の障害となる多くの問題が指摘されています。つまり、開発された技術を社会実装するためには、原料調達から製品販売まで、入口から出口までを俯瞰した視点でのシステム全体の設計が重要となります。そこで私は、バイオマスの利用状況やその組成を把握した上で、できるだけ多くの成分を高付加価値物質として回収・変換する、カスケード(多段階)利用のための技術システムの構築を目指しています。具体的には、食用油製造工程で副生する安価な廃棄物油を原料とし、ビタミンE 類や植物ステロールといった生理活性物質と、軽油代替燃料や界面活性剤原料として利用される脂肪酸エステルを同時に製造するシステムを開発しています。要素となる複数の新たな分離技術と変換技術を適切に組み合わせ、システム全体の物質やエネルギーの収支、ライフサイクルアセスメントによる環境適合性の評価、コスト試算を行い、採算性のあるシステムを組み立てることで、開発した技術システムの社会実装が実現できると考えています。計算機の中に保存された様々なデータは文字列として扱うことができます。自然言語のテキストデータだけではなく、例えば、DNA の塩基配列はA、C、G、T の4 種類の文字からなる文字列として表すことができます。また、センサデータや統計データなども数値からなる文字列とみなすことができます。そのため、データ解析において文字列処理は重要です。なかでも、与えられたテキスト文字列からパターン文字列の出現位置を求めるパターン照合は、最も基礎的な問題の一つです。本研究では、マルチトラック文字列を対象とした順列パターン照合アルゴリズムの開発に取り組んでいます。マルチトラック文字列とは複数の文字列からなる系列で、順列パターン照合では与えられたマルチトラック文字列のテキスト中に任意の順列のパターンの出現位置を求めます (図1)。順列パターン照合は複数のセンサの組合せに対するデータ処理であり、高次の特徴を見つける応用例が期待できますが、これを効率よく行うためには組合せ爆発を防ぐための様々な工夫が必要となります。本研究では順列パターン照合問題を高速に行う様々なアルゴリズムを開発しました。各アルゴリズムは理論的に速い、実験的に速い、複数のパターンを同時に処理できるなど、それぞれの特長を持っています。例えば、図2 に示した順列パターン照合オートマトンと呼ばれるデータ構造を用いた手法は、理論的にも実験的にも速いことを検証しました。与えられたパターンに対して事前に木構造を作り、辺には文字でラベルを付け、頂点には重みを付けます。また、各頂点から他の頂点へのリンク( 青い破線の矢印)を付けます。このデータ構造を用いて、入力されたテキストのそれぞれのトラックを一つのポインタに対応させ、各ポインタを独立に処理することができます( 図2参考)。そのため、テキストの順列を考えなくても高速にテキストを処理することができます。「バイオマスのカスケード利用を実現する技術システムの開発」「マルチトラック文字列に対する高速な順列パターン照合アルゴリズム」廣森 浩祐生命・環境領域博士研究教育院生3年工学研究科 化学工学専攻Diptarama情報・システム領域博士研究教育院生3年情報科学研究科 システム情報科学専攻図1.順列パターン照合の例図2.順列パターン照合オートマトン