ブックタイトルクロスオーバーNo.32

ページ
7/8

このページは クロスオーバーNo.32 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

クロスオーバーNo.32

07学際高等研究教育院/学際科学フロンティア研究所 東北大学クロスオーバー No.32全領域合同研究交流会(以下、交流会)は、学際科学フロンティア研究所教員と学際高等研究教育院生が分野を問わず一堂に会し、研究の議論を行い交流する会合です。毎回20 ? 60 名が参加しています。平成26 年度後期に開始して以来、発表の形式について試行錯誤を繰り返しながらこれまでに計27 回の交流会が開催されました。本会を企画した当初は、「様々な領域の研究がどういうものか知りたい」「あわよくば異分野研究者間の議論から新しい研究テーマが生まれてほしい」という動機がありました。深い議論を促すため、発表の途中に聴衆がどんどん質問するという形式を採ったことが本会の特徴と言われています。平成27 年度までの交流会の様子は、クロスオーバー第24、25、29 号に報告されています。今回はその後の交流会について報告します。本会は常に参加者から色々な意見、要望を聞くことに努め、形式の改善を図ろうとしています。その中で、教育院生からの「もっと多くの教員が参加してほしい」という要望と教員からの「一度により多くの研究を見たい」という要望が比較的多いと感じ、定例の交流会とは別にFRIS/DIARE Joint Workshop という大きな会合を一度やってみることにしました。これは(いつもながら教育院と研究所の事務方の多大な協力のもと)11 月22 日に実現し、片平さくらホールにおいて141 名が参加する大きなポスター発表会となりました。この試みは大成功でした。定例の交流会の口頭発表では、質問や議論に加わる院生は数名ですが、このポスター発表会は、ほぼ全員が熱い議論を行っていました。皆さん「参加してよかった」と言っていましたし、「この分野はこういう面白さがあるのか」といった発見がいくつもあったようです。Joint Workshopは今後もぜひ続けようと考えています。一方、定例の交流会では、ポスター発表はなくし、教員1 名、院生2 名の口頭発表とその後「お茶菓子懇親会」を行っています。紙面の都合上すべてを挙げられませんが、「高圧ロケット燃焼」「生体分子を用いたモノづくり」「ショウジョウバエの求愛行動」「動脈硬化」「旧石器時代人の狩猟活動」などの多彩な発表があり、議論が行われました。今年度は、私自身も口頭発表者として、「宇宙物理学とは何か?そしてそれは他の学問とどういう関係にあるのか?」という話をさせていただきました。そこで私なりに気付いたことがありましたので、ここで紹介させてください。私の専門とする物理学は、多くの現象を説明できる一つの理論を発見することが大きな成果とみなされます。ガリレオやニュートンから始まって、たとえばアインシュタインや南部陽一郎に至るまで、そのような動機が研究を促進してきました。私もそれを至上の目的と考えてきました。しかし、他の分野では必ずしもそれを目的としてはいません。むしろ多くの現象があって多様であることを示すことが成果とみなされる分野の方が多いでしょう。私は今回の発表やこれまでの交流会の経験を通して、これらの正反対の研究目的に優劣はないと考えるようになってきました。今は、別の価値観を取り入れることで、自分の物理学研究の新たな可能性を模索すべきだと思うようになっています。私の例のように、たいていの研究者は、所属する分野の考え方にある程度染まっています。それを自覚することが、自分の研究の質的な変革をイメージする一歩になるのではないかと思います。交流会はそのキッカケを与えることができます。とはいっても、交流会はまだまだ異分野交流の場として未完成であり、研究者にとってさらに有意義なものになるよう改善していくべきものです。これまでは主に運営は教員が行っていましたが、これからは教育院生の積極的な運営参加を求めていこうと考えています。(学際科学フロンティア研究所 助教 當真賢二)融合研究の主なコラボレーション活動Joint Workshopポスターセッションの様子平成28年度 全領域合同研究交流会