ブックタイトルクロスオーバーNo.32

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概要

クロスオーバーNo.32

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.3204食塩や糖分などの過剰摂取を遠因とする健康障害が世界的に問題となっています。食べることが単なる栄養摂取の手段ではなく、生活における楽しみとして深く根付いている現代においては、食物のおいしさや食べることの楽しみを保ちながら、私たちの食行動を健康的な方向へとシフトさせる必要があります。ところで、私たちは食物の「あじ」は舌で感じるものだと思いがちですが、舌上に発現する味細胞が食物中の化学物質を受容することで生じる「味覚」は、あくまで「あじ」を構成する一つの要素に過ぎません。実際には味覚だけでなく、嗅覚による匂いや口腔内体性感覚によるテクスチャ、視覚による食物の見え、さらには聴覚による咀嚼音などが脳内で複雑に相互作用しながら、全体としての「あじ」が形作られていると考えられています。現に、ある種類の味覚(e.g., うま味)が、受容機構が異なる他の種類の味覚(e.g., 塩味)の感覚を増強したり、塩辛さを連想させるような匂いが、味覚による塩味の感覚を増強することなどがわかっています。これらの味修飾現象は、おいしさを損なわずに減塩する方略の開発などに大きく貢献すると考えられていますが、その具体的なメカニズムはいまだに明らかではありません。私は現在、味覚受容機構における末梢性の味修飾現象と、高次脳機能にもとづく中枢性の味修飾現象の両者を視野に入れた研究をおこなっています。その方法として、食品学的な官能評価法や心理学的な行動実験だけでなく、非侵襲的な脳機能計測法を用いた脳科学的な研究もおこなっています。さらに、実験動物を対象とした研究により、味修飾現象の生物学的な裏付けを得ようとしています。このような学際的アプローチにより、味修飾現象のメカニズムや応用可能性を包括的に明らかにすることで、おいしさと健康を両立する新しい食生活の推進に貢献していきたいと考えています。恐竜の持つ最も重要な特徴の一つに、後足の向きが挙げられます。“恐竜祖先”では足を横に張出しているのに対して、恐竜は足をまっすぐ下に伸ばしており、この違いによって走行能や耐荷重性の向上がなされたと言われています。この姿勢の違いは、主に股関節の形態の違いに帰することができます。股関節は寛骨(骨盤の一部)と大腿骨から構成されており、本研究では寛骨側の構造(寛骨臼:大腿骨が嵌っている部分)に着目しました。祖先状態の寛骨臼は「くぼみ」ですが、恐竜の出現時にここが「孔」になったことが知られています。このような形態進化の機構を理解する為には、形態の“作り方”の進化を理解する必要があります。そこで私は、くぼみ型・孔型寛骨臼の“作り方”を比較して、恐竜の出現時に寛骨臼の“作り方”がどのように変化して孔型寛骨臼が獲得されたのかを推論しました。ただし、化石動物の胚(胎児)の情報は手に入らないので、彼らの親戚筋にあたる鳥類(孔型)や爬虫類(くぼみ型)の胚を用いました。両型の寛骨臼が作られる過程の違いや先行研究をもとに、大腿骨や股関節周囲の細胞群からの影響に差があるのではないかと仮説立て、これを検証しました。その結果、くぼみ型寛骨臼は大腿骨がくぼみの縁を誘導することで作られる一方、孔型の寛骨臼は大腿骨もしくは関節内の未分化な細胞が寛骨の軟骨を消し去ることで作られることが示唆されました。この結果をもとに、恐竜の出現時に寛骨臼の“作り方”の様式が全く質の異なるものに変化したことによって孔型寛骨臼が獲得されたのではないか、更にはそれが恐竜の後ろ足の姿勢を変化させ、彼らの繁栄の鍵になったのではないか、という仮説を提唱しています。従来の恐竜の研究は地学や比較解剖学に牽引されてきましたが、このように発生生物学的な解析を行うことで、恐竜研究に新たな視点と奥行きをもたらすことができるのではないかと考えています。「おいしさと健康をつなぐ味修飾現象の包括的検討」「実験発生学的観点からの恐竜研究」大沼 卓也生命・環境領域博士研究教育院生3年文学研究科人間科学専攻江川 史朗生命・環境領域博士研究教育院生3年生命科学研究科 生命機能科学専攻研究教育院生の研究紹介