ブックタイトルクロスオーバーNo.31

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概要

クロスオーバーNo.31

Tohoku UniversityCROSS OVER No.31小林記緒生命・環境領域博士研究教育院生3年農学研究科応用生命科学専攻「性成熟から繁殖期を通じた精子エピゲノム様式の加齢性変化」ほ乳類動物の精子の中には、ゲノム情報に加え、エピゲノム情報(DNAメチル化といった化学修飾が規定する遺伝情報)が含まれており、このDNAメチル化様式が受精後の発生・発達に必須であるとされています。近年、加齢によって精子DNAメチル化様式に変化が生じ、次世代個体の形質に変化を与える可能性が報告されました。一方、畜産現場では種雄動物から長期に渡って精液を採取し、人工授精により産仔を作出しますが、期待された遺伝形質をもつ産仔が一定して得られない事例もあります。その例として、加齢により、種雄動物の精子DNAメチル化様式に変化が生じ、産仔の形質に予期せぬ影響を与える蓋然性が考えられます(図1)。そこで私は、精子の質的評価指標として精子DNAメチル化様式プロファイリングの有用性を明らかにすることを目的に、精子エピゲノム様式の加齢性変化を研究しています。精子エピゲノム様式の加齢性変化は、ヒト以外のほ乳類動物では詳細は明らかになっておりません。性成熟直後(性成熟早期)から、繁殖期、繁殖晩期のマウス精子のDNAメチル化様式を比較しました。レトロトランスポゾン領域(LINE)のメチル化レベルが加齢とともにわずかに上昇したため、ヒトと共通の変化が観察されましたが、他の領域では繁殖期と繁殖晩期にメチル化レベルの差はありませんでした。一方、興味深いことに、ほとんどの繁殖期や繁殖晩期由来精子が、母性インプリント調節領域(mICRs)や精子形成関連遺伝子群において正常に低メチル化されているにも関わらず、性成熟早期由来精子の一部が、これらの領域で高メチル化されていました(図2)。通常、mICRsは低メチル化されていることで正常な発生に寄与するため、性成熟早期由来精子の一部が不完全なDNAメチル化様式をもつことを示唆します。以上より、性成熟早期のマウス精子にはDNAメチル化様式が不完全なものが含まれ、受精率や受胎率の低下が懸念されます。その後、加齢とともにその様式は解消され、繁殖期から繁殖晩期を通じて長期間維持されることを示しました。今後、種雄動物の精子の品質維持を目的に、精子の質の新たな評価法への応用が期待されます。図1.本研究の概要図2. Plagl1という母性インプリント調節領域(mICRs)について、各時期の精子のメチル化レベルを評価した。上原卓也先端基礎科学領域博士研究教育院生3年工学研究科応用化学専攻「超微細加工技術を用いた光メタマテリアルの創製」材料特有の光学特性とは異なる性質を示すメタマテリアルは自然界の材料では達成できない電磁気特性を有するため、新奇光学素子として多岐に渡る応用が期待されています。代表的な例として負の屈折現象を利用した平板レンズや光学迷彩などが挙げられます。メタマテリアルの光学特性(透磁率や誘電率)は、メタマテリアルを構成するサブ波長構造の設計により自由に変調することが可能です。近年では、可視光領域で駆動するメタマテリアルの実現が期待され、サブ100ナノメートルサイズの貴金属構造体を高精度かつ大面積に作製する技術が必要とされています。私たちのグループでは、この課題に対するアプローチとして光ナノインプリントリソグラフィ(UV-NIL)法に着目しています。ナノインプリントとは、基板上に極薄膜で成膜した光硬化性液体に対して3次元の凹凸構造を有する鋳型(モールド)を押し付け、紫外線を照射することにより架橋させ、基板上に高分子微細構造を作製する技術です。微細構造を有する高分子材料をマスクとして、プラズマエッチング等の手法により基板加工を行うことで、鋳型と同じ形状の微細構造を基板に転写することが可能となります(図1)。私たちはこれまでに、周波数領域解析法に基づいて可視光領域にて光の磁場成分と応答を示すスプリットリング共振器(SRR)構造体を設計し(図2)、UV-NILを用いて金SRR構造体を光学素子に資する面積で作製することに成功しています。また、偏光透過スペクトルを測定することにより、作製したSRR構造体が可視光領域にて特異的な光学特性を示すことを明らかにしました。現在は、作製した金SRR構造体をナノインプリント法により集積し、3次元光学素子への展開を目指しています。図1.光ナノインプリントリソグラフィ(UV-NIL)の模式図図2.光の磁場成分と応答するスプリットリング共振器(SRR)構造体の模式図04