ブックタイトルクロスオーバーNo.31

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概要

クロスオーバーNo.31

Tohoku UniversityCROSS OVER No.31研究教育院生の研究紹介志賀敬次物質材料・エネルギー領域博士研究教育院生3年工学研究科材料システム工学専攻「浮遊帯域溶融法によるBaTi 2 O 5系複合酸化物の作製とその諸性質に関する研究」チタン酸バリウム(BaTiO 3)は、室温で高い誘電率、自発分極値および圧電定数を有する強誘電体であり、焼結体でも優れた誘電性と圧電性を示すため、積層セラミックスコンデンサや圧電アクチュエータなど広く実用化されています。しかしながら、BaTiO 3は強誘電性が消失する温度(キュリー温度)が低く、高電界および高温度下で絶縁劣化が顕著になります。BaTiO 3よりも高いキュリー温度と絶縁性を持つ強誘電体に二チタン酸バリウム(BaTi 2 O 5)があります。BaTi 2 O 5は、BaTiO 3に匹敵する高い圧電定数を持つことが予測されており、高温域で使用可能な圧電体としての応用が期待されています。一方、BaTi 2 O 5は分解溶融するために大型単結晶の育成が難しく、圧電定数は測定されていません。また、漏れ電流の影響で分極処理が難しいことは知られていますが、その電気伝導特性は明らかになっていません。私は、まず浮遊帯域溶融法により大型単結晶の育成に取り組みました。温度勾配の最適化により直径5.5 mm、長さ30 mm以上の大型単結晶を化学量論組成の融液から直接育成しました。そして、電気伝導特性を明らかにするためにBaTi 2 O 5単結晶のインピーダンスを測定しました。インピーダンス法は材料のイオン伝導を広い温度域で簡便に検出できる方法です。インピーダンス解析の結果、BaTi 2 O 5は(001)に垂直方向には電子伝導が優勢であるのに対し、(010)に垂直方向(自発分極方向)にはイオン伝導体であることを明らかにしました。現在は、元素置換によるBaTi 2 O 5の強誘電性およびイオン伝導性の向上に取り組んでいます。高価数の元素で置換すると絶縁性が向上し残留分極値が上昇すること、また、低価数の元素で置換すると酸素空孔濃度が増加しイオン伝導性が顕著になることが分かってきています。今後は、共晶反応を利用したBaTi 2 O 5配向セラミックスの高速合成に取り組み、BaTi 2 O 5系圧電体・誘電体・イオン伝導体といった機能性材料の開発を目指します。図異原子価元素置換がBaTi 2 O 5単結晶のインピーダンス応答(T = 623 K)および欠陥状態に及ぼす影響: ?無置換、?低価数元素置換、および?高価数元素置換したBaTi 2 O 5。関藤麻衣人間・社会領域博士研究教育院生3年環境科学研究科先進社会環境学専攻「社会選択に関する融合領域からのアプローチ」従来から存在する環境問題の重要性の高まりに加え、東日本大震災を契機とする社会・経済情勢の変化により、環境や防災といった要素を十分に考慮した持続可能な社会構築が望まれています。本研究の目的は、早急な合意形成かつ社会費用の低い効率的な施策実行のための社会選択の方法を、環境経済学と行動科学のアプローチを用いて明らかにすることです。特に、東日本大震災からの復興に向け?災害廃棄物処理地の選定、?被災者の居住地の選択、?復興関連の技術や方法の選択に関する社会選択に着目しています。復興対策や今後の社会づくりに対する社会選択の難しさは、不確実な将来の意思決定を早急に求められる中で、政府や企業が人々の意思決定や行動要因となる価値関数(効用関数)を十分に理解できていないことが一因となっています。そのため本研究では復興対策という具体的な課題に対し、環境評価手法を応用し、対策に対する地域住民や国民、利害関係者らの持つ価値を正確に測る試みを行っています。大規模な選択が必要な状況において、個人の持つ多様な選好をもとに社会の選好の集計方法、社会による選択ルールの決め方、そして社会が望ましい決定を行なうようなメカニズムの設計方法を提案します。消費者の選好の正しい理解には、環境経済学の視点のみでなく、社会学や心理学などの知見を取り入れた融合的な分析が必要となります。環境科学と社会学や心理学との分野横断的な研究蓄積は非常に少なく、とりわけこれまでの環境施策には、消費者の個人の意思決定要因や政策との相互関係を捉えようとする試みはあまり行われていません。以上のことから、融合領域という新しい研究分野への取り組みとして、環境科学・社会学・心理学を基盤とした融合領域への取り組みが、学術的な意義と社会的な意義の両面において有用なインプリケーションを発揮できると考えています。02