ブックタイトルクロスオーバー No.30

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概要

クロスオーバー No.30

Tohoku UniversityCROSS OVER No.30研究教育院出身者の活躍「地球内部物質の超高圧力超高温下での物性探究」鎌田誠司東北大学学際科学フロンティア研究所助教先端基礎科学領域平成20年度~平成22年度博士研究教育院生地球は半径約6400 kmと大きな惑星で、その内部は高圧力(地球中心で364万気圧)と高温(地球中心で摂氏5000度以上)の世界で、完全には理解されていません。このような地球内部を知る方法として地震波伝搬速度から内部を見る方法があります。波の伝わり方(反射や速度)から地球内部の層構造や密度を推定することができます。この手法によって作られた地球内部を1次元的に表したモデルとしてPREM(PreliminaryReference Earth Model)があります。また、岩石を調べることでも地球の化学的な性質を知ることができます。さらに宇宙から飛来する隕石も化学的な知見を与えてくれます。なぜならこのような隕石は太陽系を構成する物質であり、未分化な隕石は地球を作った原材料である可能性があるためです。このような背景から地球内部は、その構造や構成物質などが明らかにされてきました。その結果、地球は表層から、地殻、マントル、核からなることが分かり、地殻とマントルは岩石からなるのに対し、核は金属からなることが分かっています。そして、地球中心に存在する核は、鉄隕石の存在や核の密度から主に鉄からなると考えられていますが、その密度は純鉄と比較すると小さいという問題があります。地球核は鉄より密度が小さいため、密度を下げる不純物(軽元素)が含まれていると考えられています。私は核にどのような軽元素が含まれるのかを明らかにするために研究を行なっています。前述のような研究背景の下、私は博士研究教育院生として研究を行ないました。地球内部を解明するためには地球内部に存在する物質を高温高圧状態におき、観察する必要があります。地球内部相当の圧力を発生させるためにダイヤモンドアンビルセルと呼ばれる高圧力発生装置を用いました。これは1対のダイヤモンドを対向させ、ダイヤモンド間に試料を挟み、高圧力を発生させます。そして高温発生にはレーザーを用いています。光学的に透明なダイヤモンドを通してレーザーを鉄や金属などレーザー吸収体へ照射します。これらによって、地球内部の非常に高圧力で高温な世界を再現しています。しかしながら、高圧力を発生させることができる領域は小さいため、そこから情報を得るためには非常に強力な放射光が必要であり、また化学的な分析にはナノテクノロジーが必要となります。これらの分野と融合することで研究を進めていきました。地球核の化学的・物理的性質を明らかにするために、地球核物質を高温高圧状態にして安定な相を調べたり、その密度を測定したり、音速測定を行ない、また、核物質とマントル物質との化学反応実験を行ないました。これらによって、PREMとの比較により、地球核物質の音速が地球内部の音速を再現できるのかを議論し、核物質の融点から固体液体境界である内核と外核の境界温度を推定し、核内部の温度勾配を推定しました。こういった成果は無事論文化させるまでに至りました。このような研究を進めるうえで、放射光施設への出張や実験装置の購入など多くの研究予算が必要でありましたが、博士課程三年間において国際高等研究教育院より博士研究教育院生への研究予算配分によって支援されていました。研究を進めるうえで非常に助かりました。このような多大な支援に感謝しています。卒業後は、イリノイ大学にて博士研究員として研究を続けた後、東北大学大学院理学研究科にて助教職を得たのち東北大学学際科学フロンティア研究所へ移籍しました。現在も地球核について研究を続けていますが、博士研究教育院生として採用された国際高等研究院と連携している学際科学フロンティア研究所にて助教として研究を続けています。これからも博士研究教育員生時代に培った学際的な研究視点を持ち続けて新しい分野を開拓していきたいと思います。学際高等研究教育院生受賞平成25年度博士研究教育院生櫻井美奈子生命・科学領域医学系研究科・医科学専攻『平成27年度七星賞最優秀賞』平成27年度修士研究教育院生・平成28年度博士研究教育院生内山愛子先端基礎科学領域理学研究科・物理学専攻『平成27年度物理学専攻賞』06