ブックタイトルクロスオーバーNo.28

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概要

クロスオーバーNo.28

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.2804強磁性層/非磁性層/強磁性層のサンドイッチ構造では、強磁性層の磁化の相対角に依存して巨大磁気抵抗効果( GMR) が現れます。本研究で注目しているスピントルク発振素子( STO)は、このGMR 効果を利用した直径数百 nm 程度の微小な発振器です。STO はGMR 素子に電流を流すというシンプルな構造と動作原理でありながら、マイクロ波発振器・検出器、磁場センサなど多岐にわたる応用が見込まれる魅力的な素子です。STO を実際にデバイス応用する際、その性能を表す指標として「 発振出力」 および「 周波数純度( 発振スペクトルの細さ)」 が挙げられます。私たちの研究室では、これまで「 ホイスラー合金」 という材料を用いることにより発振出力の向上に取り組んできました。ホイスラー合金の一種であるCo2( Fe,Mn)S (i CFMS) 合金は、伝導を担う電子が大きく「 スピン偏極」 しており、GMR 効果が大きくなることで高出力のマイクロ波発振を得ることが出来ます。しかしながら、従来のデバイス構造ではCFMS 電極中に誘起される磁化の運動が不均一になってしまい、高い周波数純度を得ることは困難でした。そこで本研究では、ホイスラー合金を基軸としながら、微細加工技術を駆使することにより磁化の運動をより積極的に制御し、高出力および高周波数純度を同時に実現することを目指しています。さらに、STOの発振ノイズを定量的に評価することで、高周波工学の観点から材料・デバイス設計を行います。現在私たちは、磁化の運動の効果的な制御のため、微小な磁性体ディスクにおいて形成される「 磁気ボルテックス」に着目して研究を進めています。磁気ボルテックスは外界からの擾乱(熱など)に対して優れた安定性を示し、安定した磁化の運動を得るのに適しています。最近の研究において、私たちは光電子顕微鏡を用いることによりCFMS ディスク中における磁気ボルテックスの形成を直接観測することに成功しました。またこれらをSTO に用いることで従来のSTOのおよそ10 倍の周波数純度を得ることに成功しています。現在は詳細なノイズ解析を通してSTO におけるノイズのさらなる低減および出力の向上のため、材料・素子構造の最適化に取り組んでいます。現在は詳細なノイズ解析を通してSTO におけるノイズのさらなる低減および出力の向上のため、材料・素子構造の最適化に取り組んでいます。労働者が精神的に健康に働くには、どうしたらよいのでしょうか。このシンプルな問いに対する答えは、意外にも複雑です。賃金を上げ、労働時間を少なくし、客観的に測定できるような労働諸条件を、社会として改善するというのもひとつの答えです。または、職場環境を改善し、個人の労働満足度を向上させるというのもある程度有効です。ただし、これらの方策だけでは、労働者の精神的健康格差の全体像を解明することはできません。私の研究では、社会と個人の関係性へと着目し、社会調査データを用いた統計分析によって、労働者における社会と個人の関連とその相互作用における影響過程を研究しています。具体的には、労働者の精神的健康を害する要因のひとつとして、社会的な労働に対する価値よりも、個人が労働に抱く価値が低くなる、自職卑下という状態を指標化・分析しています。現在までの研究で、この自職卑下の状態が、先ほど挙げた要因を統計的に統制してもなお、労働者の精神的健康に負の影響を与えることがわかっています。自分の就いている職業に対し、社会的に低評価であっても、自負を持って働くことができれば、精神的健康を維持できる可能性があるということです。では、どのような人が、自職卑下に陥らずに、自負をもって働けるのでしょうか。自職卑下に対し、就いている職業の社会的評価や収入の高低などは一貫して強い影響をもっているわけではなく、職業に対する価値観、とりわけ、職業評価の際に、職業のどのような側面を重要視したかが影響することが実施した調査から示されました。つまり、自職も含め、職業全体に対して柔軟で多元的な評価軸を持っていることによって、自職卑下に陥らず、精神的健康を維持・向上できる、ということが明らかになりました。今後は、第2次調査を縦断的に行い、この影響過程の因果関係を明確化し、相互作用のダイナミズムを組み込んだ、更なる研究を行っていきます。「高スピン分極ホイスラー合金を用いたボルテックス型スピントルク発振素子の研究」「労働者の自職卑下メカニズムと精神的健康格差」山本 竜也デバイス・ テクノロジー領域博士研究教育院生2年工学研究科知能デバイス材料学専攻古里由香里人間・社会領域博士研究教育院生3年文学研究科 人間科学専攻