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概要

Co44

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4406亡くなって「骨」になってしまったら、私たちは彼らの「顔」を想起できるでしょうか。私が研究を進めている復顔法は、骨に該当する人種の筋肉や脂肪といった軟部組織の厚さを頭蓋骨表面にオーバラップさせ、顔貌を復元する法人類学的手法です。復顔には、性別・年齢・身長・栄養状態等を加味した、骨から皮膚までの軟組織のデータが必要ですが、日本人を対象としたデータは1960 年代の報告以降、研究は進められていません。昨今の遺伝情報解析技術の発展によりDNAからも顔の復元技術が確立されつつありますが、DNA は骨から常に採取できるとは限らず、また生後の生活習慣などによる変化までは読み取ることができません。私は頭蓋骨の表面の凹凸との位置関係の把握が復顔に重要と考え、特に下顔面の顔貌に影響を与える咬合関係に注目しました。本研究では口腔外科で手術をうけた患者さんのCT データや顔面形状等のデジタル化された三次元データを用い、重ね合わせ計測を行うことで、誤差が少なくなるような解析を行っています。復顔法は該当者が浮上しない限り答え合わせができないことが課題としてあげられていましたが、この新しい試みでは、「骨」の答えとなる顔面形状が手元にあるため、トライ&エラーを繰り返すことで、より正確な情報になると考えています。復顔法の応用は、現代の身元不明者に限らず、古墳時代や江戸時代といった古人骨も対象にしています。歴史上の人骨から情報を引き出すため、様々な領域の専門家と共同し、領域横断研究も進めています。最近では福島県喜多方市灰塚山古墳から出土した人骨について、考古学・人類学・法医学といった各専門家と協力し古墳時代王族の実態に迫りました。これらの研究成果は市民公開シンポジウムで発表したほか2020 年2 月に放送されたNHK「偉人たちの健康診断」等で紹介されました。今後も他領域の専門家と協力しながら現代人の医療データを応用し様々な分野に応用していきたいと考えています。「ごみ」が何かを定義することの難しさは、鼻をかんだティッシュのように多くの人にとって厄介で不用なモノがある一方で、都市鉱山ともてはやされる廃電子機器のように再資源化可能なモノも存在することを思い浮かべていただければ容易に想像がつくと思います。それでもある程度ごみを一般化する特徴を、私の専門分野である社会人類学の観点からいくつか挙げます。生産や消費のフローでは、モノを買い手売り手間で確実に受け渡すことが重要ですが、それに対して廃棄のフローではその場から排出することが主目的です。その結果、モノの引き受け手がおらずにごみ山として滞留したり、フローが制度化されていても取りこぼしが発生したりします。つまり、基本的には「自由」な成り行きに任せればうまくいくとされる市場経済とは異なり、フローを強制的につくり出すような環境政策が重要視されます。近年社会科学分野では、環境政策の策定や評価において、自然環境に対する影響に比べて、政策がもたらした権力の再配置等、人間社会への影響が看過されてきたことが指摘されています。私のこれまでの研究では、日本都市部のインフォーマルな不用品回収業者の参与観察から、先行研究でほとんどわかっていなかった彼らの業務の実態や、そこでのモノや金銭のフローを明らかにしました。そこから、法的グレーゾーンにある彼らの分類体系と行政のそれとが根ざす原理が異なること( 前者が「個別化, individuation」、後者が「均質化, homogenization」)、また業者をインフォーマルたらしめている制度の歴史について論じてきました。また、もう一つのごみの社会的特徴として、排出地域と処分地域との関係性が非対称になりがちであることが挙げられます。日本でも都市部で出されたごみを受け入れる地域の住民が異議を申し立てる「ごみ紛争」や、大規模な不法投棄などがありました。グローバルな例としては、北極圏が、海流やアザラシなど現地の生物の生体機能の影響で、日本を含む他地域で排出されたごみや有害物質の「掃きだめ」になっているという事例があります。この問題への関心から、来年度はアラスカでの現地調査を予定しています。「 ごみと社会」「 新手法による骨格・顔面の三次元的形状評価を用いた頭蓋からの復顔法の確立」波田野 悠夏人間・社会領域博士研究教育院生3年歯学研究科歯科学専攻石井 花織人間・社会領域博士研究教育院生3年環境科学研究科先端環境創成学専攻