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概要

Co44

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4404真核生物において、リボソームで翻訳された新生タンパク質( 以下、新生鎖) の約30%は小胞体内に挿入されます。翻訳中もしくは翻訳後の新生鎖はジスルフィド結合の形成を伴うタンパク質の折り畳み、すなわち酸化的フォールディングを経て、生理的機能を持つ「正しい」立体構造を形成します。しかし、免疫グロブリンやインスリンのように、ほとんどのタンパク質は複数のジスルフィド結合を有するため、誤った組み合わせのシステイン残基間でジスルフィド結合が形成される場合もあります。このようなタンパク質は正しく立体構造が形成できないだけでなく、アルツハイマー病やハンチントン病等の神経変性疾患や糖尿病等の原因となることが知られており、正確かつ迅速な「正しい」ジスルフィド結合形成は極めて重要なイベントです。小胞体内では、このような「正しい」ジスルフィド結合の形成を促す品質管理機構が存在しており、現在その中心的プレーヤとして20 種類以上のPDI(Protein Disulfi de Isomerase) ファミリー酵素が注目されています。このPDI ファミリー酵素が翻訳後の新生鎖にはたらきかけることで、効率的なタンパク質の酸化的フォールディングを促すことはすでに知られています。一方で、より効率的に「正しい」構造のタンパク質を合成するために、翻訳後ではなく、リボソーム上で翻訳途中の新生鎖に対しPDI ファミリー酵素が作用することが近年示されつつありますが、その詳細は未解明です。そこで私は、PDI ファミリー酵素が新生鎖翻訳のどの段階でどのような作用機序で働きかけるかを明らかにすることを目的に研究を行っています。現在、自身が開発した新生鎖へのジスルフィド結合導入モニタリングアッセイと高速原子間力顕微鏡を用いて、これらの問題を解明しようとしています。今後は、さらに研究を発展させ、細胞生物学的手法にも着手する予定で、分子レベル~細胞レベルでの生命現象の解明を目指したいと考えています。界面活性剤とは、親水基と親油基を併せ持ち、水と油を混合させる物質のことです。その特性から、食品や化粧品、洗剤など、幅広い分野で利用されています。その中でも私は、親水基に糖を、親油基に油脂由来の脂肪酸を持つバイオマス由来界面活性剤(糖脂肪酸エステル)に注目しました。糖脂肪酸エステルには、糖と脂肪酸の組み合わせによって機能性が変化すること、安全性が高いこと、静菌性を持つこと、などの特長があります。しかし、価格が高いため、優れた特性を持つにも関わらず、現状ではその利用は一部の食品に限定されています。価格が高い理由として、①性質が大きく異なる糖と脂肪酸を効率的に反応させるのが困難で製造コストが高いこと、②原料に食と競合する食用糖と油脂が利用されていること、が挙げられます。私の研究では、この2 つの問題解決に取り組んでいます。まず、①に関しては、反応の進行を促進する触媒に着目し、現行法よりも効率的な製造プロセスの開発に取り組んでいます。これまでの成果として、従来は水処理などの用途で使われていたイオン交換樹脂を新たに固体触媒として用いることで、現行法(90?100℃、減圧)よりも温和な条件(60℃、大気圧)で目的物を連続製造できることが分かりました。さらに、現行法で問題となる、品質を低下させる副生物の生成や熱による製品の変色がないため、後段の精製プロセスも効率化できると考えています。②に関しては、製糖産業や食用油産業から排出される非可食バイオマスを、新たな原料として利用することで解決できる可能性があります。これまでに、モデル原料を用いて実験を行い、反応の進行を阻害する不純物やその許容量について検討を進めてきました。今後さらに、産業から排出される実バイオマスの利用可能性を検証する必要があると考えています。実際のバイオマス原料を利用した場合、得られる製品は、これまで市場になかったものが多く、また様々な構造のミックス品になります。そこで、その組成に応じた機能性評価を行うことで、新たな用途提案につなげたいと考えています。「 バイオマス由来界面活性剤の効率的な合成と機能性評価による用途開拓」「 翻訳途上新生鎖の立体構造形成を手助けするPDIファミリー酵素の分子機構を明らかにする」笹山 知嶺生命・環境領域博士研究教育院生3年工学研究科化学工学専攻平山 千尋生命・環境領域博士研究教育院生3年生命科学研究科分子化学生物学専攻研究教育院生の研究内容紹介