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概要

Co44

Tohoku Un i v e r s i t yCROSS OVER No.4410DIARE の教育院生とFRIS の若手教員は平成26 年以来、「全領域合同研究交流会」(以下「交流会」と呼ぶ)で定期的に集まり、分野を問わず様々なテーマについてセミナー発表や討論を実施してきています。若手研究者によるこのような集まりは、全国的に見てもユニークなものです。そこで交流会が始まってまもなく、DIARE シニアメンターの勧めもあり、その内容を書籍に再録しようという計画が立ち上がりました。当時FRIS に所属していた青木英恵氏(FRIS)、有松唯氏(広島大学)、井上千穂氏(FRIS技術職員)、津村耕司氏(東京都市大学)、藤村維子氏(山形大学)、及び當真賢二(FRIS) は、「東北大学学際科学フロンティア研究所『百科繚覧』編集委員会」を構成しました。そして交流会の発表者から12 名選んで、論考を執筆してもらい、それらをまとめた書籍『百科繚覧~若手研究者が挑む学際フロンティア~』を約4 年かけて完成させました。本書タイトル『百科繚覧』は、色々な方向に発展していく沢山の学問分野を一覧する、という意味を込めた造語です。Vol.1 はFRIS 助教3 名による天文学、情報科学、異分野交流論、DIARE 教育院生3 名による行動経済学、数学、植物栄養学をテーマとした専門的研究の内容とその学際的展開の可能性を高校生や大学学部生向けに平易に論じています。読者が様々な分野の考え方に触れることで、異分野交流を始めるキッカケをつかむことを狙いとしてまとめています。Vol.1のプロローグで私が詳しく論じていますが、異分野交流には少なくとも3つの意義があります。それは、(A) 自分の研究課題の価値を見極める、(B) 様々な思考方法を取り入れる、(C) 社会全体の中で研究という活動のあり方を考える、ということです。紹介されている6 つの研究には、これら3 つの意義のどれかが活きています。Vol.2 は、FRIS 助教4 名による生物学、海洋学、考古学、ナノバイオ工学、DIARE 教育院生2 名による素粒子物理学、化学のテーマの論考とその学際的展開で構成されています。Vol.2 の趣旨は、異分野交流のキッカケをつかんでもらうことに加え、より具体的に、学際的な広い視野が実際の最先端の研究をどう進めるかについて知ってもらうことに重きを置いています。上述したように、異分野交流は各研究者の活動や研究者コミュニティと社会にとっての利益となりますが、その先には「知の統合」というさらに大きな目標があると思います。例えば医学は、人間を遺伝子や分子という物質の集まりとする分子生物学的な見方、人間の状態を情報として捉えて効率的な医療を目指す情報学的な見方、何を病気とするか定義するのに必要な社会学的ならびに心理学的な見方、そのほか医療倫理や医療制度の視点など、実に様々な学問テーマを含んでいます。研究者はそれぞれのテーマを選んで研究に没頭しますが、それぞれのテーマはやはり医学の一つの切り口でしかありません。より良い医療を実践するには、すべての切り口で得た知見や考え方を統合することが必要です。専門分化が進んだ現代、このような統合の必要性はどんな学問にも当てはまることでしょう。これからの学問の担い手である若手研究者は特に、この「知の統合」を意識して研究活動に励むことが必要だと思います。読者がそれを意識する第一歩に本書が役に立てれば、それに勝る喜びはありません。ぜひ多くの人に読んでほしいと思っています。當真 賢二(学際科学フロンティア研究所 准教授)DIAREとFRIS の若手研究者が共同制作した書籍『百科繚覧 ~若手研究者が挑む学際フロンティア~』Vol.1 が平成31年1 月11 日に、Vol.2が令和2 年1 月31日に東北大学出版会から刊行されました。『百科繚覧 ~若手研究者が挑む学際フロンティア~』Vol.1, Vol.2が出版されました。《目 次》    序 佐藤正明プロローグ 現代の研究に活きる学際的姿勢 當真賢二  第1章 宇宙の明るさを測る―木星からの     天文観測を目指して 津村耕司  第2章 人口減少期の交通デザイン 山口裕通  第3章 曲面の平面地図を描く―擬等角写像とその応用     島内宏和  第4章 歴史から展望する農業の未来―微生物を利用した     持続可能な農業を目指して 小西範幸  第5章 人間的(脳型)コンピューティングによる     安全で快適な暮らしの実現に向けて 鬼沢直哉  第6章 分野の垣根を越えた融合に向けて―     リサーチアドミニストレーターの視点から 藤村維子エピローグ 青木英恵《目 次》    序 山谷知行プロローグ 若手研究者による異分野融合の試み 津村耕司  第1章 鳥類の遺伝子改変技術がもたらすもの―     生殖細胞の不思議な世界の紹介とともに 齋藤大介  第2章 海が変われば天気が変わる? 杉本周作  第3章 宇宙をひも解く―     われわれはモノをどのように見ているか? 村木久祥  第4章 レーザー光を用いてナノ分子における     化学反応の動画を「撮る」 山崎馨  第5章 どうしてヒトは国家を創造したのかー     人類・社会の未来を過去から考える 有松唯  第6章 ナノテクで神経細胞の回路を作る 山本英明エピローグ 藤村維子