【海外研究集会発表支援プログラム報告】宇田川 喜信さんがµTAS 2025(Micro-Total Analysis Systems)にてポスター発表をしました

◇発表者◇
宇田川 喜信
デバイス・テクノロジー領域
博士研究教育院生3年
工学研究科 バイオ工学専攻 

◇学会名称◇

Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences-Micro-Total Analysis Systems (μTAS 2025)
開催地◇
アデレード・オーストラリア
◇開催期間◇
2025年 11月2日 ~11月6日

  


                      ──── 発 表 題 目 ────

             
          Assessing hypoxia-induced metabolic changes in cell spheroids via electrochemical measurement


                      ──── 発 表 内 容 ────

 本研究では、低酸素環境および回転浮遊環境下で細胞塊(スフェロイド)を培養し、それぞれの培養条件における代謝活性の違いを電気化学的に解析した。低酸素環境下では、酸素を必要とする酸化的リン酸化から、酸素非依存的な解糖系への代謝シフトが生じるため、酸素消費量に変化が現れると考えられる。
肝臓モデルとして一般的に用いられるHepG2細胞を培養した結果、酸素濃度によって成長速度や乳酸産生量が異なり、代謝経路のシフトが示唆された。一方で、呼吸活性の電気化学計測では明確な差は認められなかった。これは、大気条件下で計測を行ったことによる影響と考えられ、今後は計測環境の最適化が必要である。さらに、PCRによるmRNA発現解析の結果、低酸素条件で発現が増強されるいくつかの遺伝子が、回転浮遊培養においてより顕著に増加していることが確認された。これらの結果から、回転浮遊培養による酸素の持続的な供給が、スフェロイドの代謝活性維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。

               ──── 今回の発表によって得られた成果及び問題点  ────

 本発表では、回転浮遊培養においてmRNA発現量が維持されている点に関して関心を持っていただき、活発な議論を行うことができた。本研究で新たに取り組んだ回転浮遊培養では興味深い結果が得られたため、今後の論文化に向けてさらに考察を深めていきたい。

                   ──── 今後の研究目標及び課題 ────

 今後は、異なる培養環境で得られたスフェロイドを用いた薬剤評価を検討している。細胞密度や代謝状態の違いによって、薬剤応答や薬効が変化する可能性があると考えられる。